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更新日:2010年10月1日

F.L.ライトについて

フランク・ロイド・ライト(Frank Lloyd Wright)は、アメリカ合衆国が生んだ今世紀最高の建築の巨匠です。彼は、およそ一人の業績とは信じられないほど厖大な設計業績を遺しましたが、一貫して彼の標榜する「有機的建築(Organic Architecture)」の理想を追求し続けました。「有機的建築」というのは、一口でいえば、より豊かな人間性の保証に寄与する建築ということでしょう。世界の近代建築が、機能性、合理性の追求を目標としていたので、「有機的建築」は時に、そうした方向とは相容れぬものとして、対立する概念のように誤って理解されたこともありました。つまり、機能主義建築や合理主義建築を主流とするならば、この「有機的建築」は、異色の、あるいは異端の建築と見なされたわけです。 

ところで、ライトは90年以上という長寿を全うし、死の直前まで建築設計の業務に携わりました。厖大な設計業績は、計画案をも含めれば、800件以上もの業績を遺したのです。実現したのは約半数の400棟にも及ぶのですが、これらのほとんどは、彼の母国アメリカ合衆国の各地に建っています。

彼の建築家としての重要性は、住宅作家として、人々の生活の拠点を造り続けたことでしょう。もちろん、住宅以外の公共的建築にも腕を振るったのですが、傑作の多くは住宅作品であったのです。

70年にも及ぶライトの建築活動にも波はありました。1910年までの第1次黄金時代、1936年以降の第2次黄金時代は、それぞれ大活躍したのですが、両黄金時代に挟まれた1月4日世紀は余り仕事に恵まれない不毛の時代といわれています。わが国での実績は、この恵まれない不毛の時代といわれています。わが国での実績は、この恵まれない時代の貴重な仕事だったわけです。 

それはともかく、ライトは第1黄金時代には「草原住宅(Prairie House)」を確立しましたし、第2黄金時代には「ユーソニア住宅(Usonian House)」を次々に建てて、人間性豊かな住生活の保証に寄与したのです。「草原住宅」というのは、アメリカ中西部の草原地帯にあって、住宅は大地に根を張り、地をはうように造られて、自然と一体となることを目的とした住宅です。また「ユーソニア住宅」というのは、一定の型こそ存在しませんが「合衆国に生をうけた人々は、貧富の違いに関わりなく、豊かな生活をする権利がある」として、低廉な小住宅を設計していった彼の作品の総称です。ライトが、住宅の経済性のために、積極的にプレハブ化と取り組んだ事業は、いまだよく知られていないことのようです。

ライトは無味乾燥なビルの林立する近代都市を嫌っていました。人々の住まいは1エーカーの敷地に1家族が住むべきだとも提唱しました。人間性の豊かさとは何かについて、真しに取り組んだが故に、ライトは巨匠であり、偉人であり得たのです。

自然の破壊、人間性の欠落が問題になっている昨今、ライトの主張は重要な意味をもってわれわれに迫ります。機能性の追及のみで豊かな人間性は保証されないとして「有機的建築」の理想を実践した彼の設計態度は、今こそわれわれに、大きな指針と啓示をあたえてくれるものというべきでしょう。

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