第U部 本市を取り巻く現状と課題 T 本市の概況 1.人口の推移  昭和60年から本市の人口推移をみると,平成7年に阪神・淡路大震災の影響で減少したものの,その後増加を続けています。  また,平成19年10月1日現在における小学校区別の人口をみると,山手小学校区が18,991人,精道小学校区が12,921人と多くなっています。また高齢化率をみると,潮見小学校区が24.3%,山手小学校区が24.0%と高くなっています。 2.社会教育関連施設など 文化活動関連施設 市民センター 市民会館(本館・ホール)と公民館・福祉会館・老人福祉会館(別館)を総称した複合施設 業平町8-24 あしや市民活動センター 芦屋市を中心とした市民・行政・企業など様々な主体の協働により,まちづくりに関する事業を行い,地域コミュニティの活性化を通じて,創造豊かな市民社会の形成に寄与することを目的とした施設 精道町5-11 資料:平成20年度 教育行政要覧,芦屋市HP スポーツ関連施設 芦屋市総合公園 第4種公認陸上競技場(フィールド:110m×70m,スポーツコート:2面) 陽光町1-1 芦屋市立体育館・青少年センター 競技場1・2,剣道場,柔道場,弓道場,トレーニング室,大会議室,団体会議室,第1・2・3研修室,音楽室,料理室,体育団体室,控え室,第1・2会議室,多目的室1・2 川西町15-3 芦屋中央公園野球場 軟式野球場 若葉町1-1 芦屋中央公園芝生広場 公園広場 若葉町1-1 川西運動場 運動場 川西町14-17 西浜テニスコート 人工芝コート2面 潮見町2-1 東浜テニスコート 人工芝コート2面 浜風町2-1 芦屋公園テニスコート 人工芝コート4面 松浜町4-4 芦屋海浜公園プール 室内・室外プール 浜風町30-1 資料:平成20年度 教育行政要覧,芦屋市HP 図書館など 芦屋市立図書館 伊勢町12-5 芦屋市立図書館打出分室 打出小槌町15-9 芦屋市立図書館大原分室 大原町20-2 芦屋市立公民館図書室 業平町8-24 芦屋市立上宮川文化センター図書室 上宮川町10-5 資料:平成20年度 教育行政要覧,芦屋市HP 美術館・博物館 芦屋市立美術博物館 小出楢重や吉原治良をはじめとする芦屋ゆかりの作家の作品を中心に展示する美術部門と,芦屋の歴史を通史的に展示する歴史部門を持った施設 伊勢町12-25 芦屋市谷崎潤一郎記念館 谷崎潤一郎の業績をしのび,作品や遺品などを展示 伊勢町12-15 富田砕花旧居 “兵庫県文化の父”とよばれた詩人・富田砕花の業績をしのび,ご遺族から市に寄贈された資料類・遺品などを展示 宮川町4-12 資料:平成20年度 教育行政要覧 集会所 打出集会所 大東町17-3 翠ヶ丘集会所 翠ヶ丘町9-15 竹園集会所 竹園町5-6 前田集会所 前田町8−17 朝日ヶ丘集会所 朝日ヶ丘町30-9 春日集会所 春日町13-17 潮見集会所 潮見町7-1 浜風集会所 浜風町3-2 奥池集会所 奥池南町34-4 西蔵集会所 西蔵町11-16 大原集会所 大原町20-2 茶屋集会所 茶屋之町8-20 資料:芦屋市HP コミュニティ・スクール  生涯学習の一環として学校施設などの一部を使って,多くの市民がスポーツ・文化活動を通じて友好を深め,その運営は地域住民自らの手により,自主的に行っています。 三条コミュニティ・スクール 昭和53年9月設立 朝日ヶ丘コミュニティ・スクール 昭和54年11月設立 潮見コミュニティ・スクール 昭和56年4月設立 宮川コミュニティ・スクール 昭和57年12月設立 打出浜コミュニティ・スクール 昭和57年12月設立 浜風コミュニティ・スクール 昭和58年12月設立 岩園コミュニティ・スクール 昭和58年12月設立 精道コミュニティ・スクール 昭和60年3月設立 山手コミュニティ・スクール 昭和61年3月設立 資料:平成20年度 教育行政要覧 その他 芦屋市立青少年愛護センター 青少年育成愛護委員による街頭巡視を中心に,関係機関と連絡協調しながら青少年の健全育成と非行防止のための活動拠点施設 川西町15-3 芦屋市男女共同参画センター(ウィザスあしや) 「女性に対するあらゆる差別をなくし,男女が互いにその人権を尊重しつつ,将来にわたって豊かで安心できる社会を築いていくために,あらゆる分野で対等なパートナーとして認め合い,ともに参画できる社会を実現する」ための拠点施設 大原町2-6 芦屋市立上宮川文化センター 地域住民の社会的,経済的及び文化生活の改善向上ならびに同和問題の速やかな解決に資するとともに,児童の健全な育成を図るために,諸活動を実践推進し,明るく住みよいまちづくりに寄与することを目的とした施設 上宮川町10-5 打出教育文化センター 教育及び文化活動の充実と振興を図るための施設 打出小槌町15-9 芦屋市子育てセンター 子どもが安全に自由に遊べる場や,親同士の仲間作りの場として,また,子育ての悩みや不安を軽くするための育児相談や,子育てに関する情報提供などを行う施設 大原町23-1 資料:平成20年度 教育行政要覧,芦屋市HP 3.市内の文化財 国指定重要文化財 山邑家住宅(ヨドコウ迎賓館) 昭和49年5月21日 山手町3-10 国登録有形文化財 中山家住宅主屋・中山家住宅表門及び塀 平成19年5月29日 三条町24-16 県指定文化財 芦屋会下山弥生時代住居址 昭和35年5月12日 三条町258 伝芦屋廃寺塔心礎 昭和38年9月3日 伊勢町12-25 市指定文化財 新王寺所蔵考古資料一括 平成2年3月22日 打出町3-21 旧三条村共有文書一括 平成2年3月22日 三条町9-14 伝猿丸太夫之墓 平成2年3月23日 東芦屋町20-3 四季耕作図屏風 六曲一双 平成3年12月6日 伊勢町12-25 三好長康山論裁許状(附,挟板) 平成3年12月6日 伊勢町12-25 日吉神社石祠 平成5年3月8日 津知町6-9 小阪家住宅 平成6年3月22日 陽光町地先 徳川大坂城毛利家採石場出土刻印石 平成16年3月26日 剣谷17地先 会下山遺跡出土青銅製漢式三翼鏃 平成19年3月2日 伊勢町12-25 資料:平成20年度 教育行政要覧 4.生涯学習関連施設の利用状況 (1)市民センターの利用状況 <市民会館(本館)>  本館の利用状況をみると,平成16年度をピークに減少し,平成19年度には微増となっています。平成15年度と平成19年度を比較すると124件の増加となっています。 <市民会館(大ホール・小ホール・楽屋)>  大ホールの利用状況をみると,平成16年度をピークに減少し,平成19年度には増加となっています。平成15年度と平成19年度を比較すると12件の増加となっています。小ホールの利用状況をみると平成15年度から年々減少し,平成19年度には増加となっています。楽屋の利用状況をみると,平成16年度以降減少傾向にあります。 <公民館>  公民館の利用状況をみると,平成15年度から減少傾向となっていましたが,平成18年度は増加しています。平成15年度と平成19年度を比較すると238件の減少となっています。 <福祉会館>  福祉会館の利用状況をみると,平成15年度から減少傾向となっていますが,平成19年度は増加しています。平成15年度と平成19年度を比較すると21件の増加となっています。 (2)芦屋市立体育館・青少年センターの利用状況  芦屋市立体育館・青少年センターの利用状況をみると,増減を繰り返しており,平成15年度と平成19年度を比較すると,3,203件の減少となっています。 (3)プールの利用状況    プールの利用状況をみると,平成15年度から増減を繰り返しており,平成15年度と平成19年度を比較すると,12,566人の減少となっています。 (4)図書館の利用状況    図書館の利用状況をみると,平成15年度から減少傾向となっていますが,平成18年度は増加し,平成15年度と平成19年度を比較すると5,839人の増加となっています。 (5)集会所の利用状況    各集会所の利用状況をみると,平成15年度と平成19年度を比較すると「打出」「翠ヶ丘」「前田」「潮見」「奥池」「西蔵」「大原」「茶屋」で増加しています。一方「竹園」「朝日ヶ丘」「春日」「浜風」で減少しています。 (6)社会教育関係団体の登録状況    社会教育関係団体の登録状況をみると,平成20年の登録団体について「スポーツ」「その他」の団体の登録数が,平成15年と比較すると増加しています。また,総団体数でみると,18団体増加し、407団体となっています。 U 本市における生涯学習振興施策の主な経緯  昭和22年に本市の社会教育機構が確立して以来,61年が経過しました。この間,本市の社会教育行政は着実に進展してきましたが,その進展の主な経過をふりかえると次のようになります。 生涯学習施行施策の主な経緯 昭和22年 教育部社会教育課を設置。本市独自の社会教育委員制を制定。 昭和23年 第1回美術展覧会。第1回市民体育大会。 昭和24年 仏教会館に図書館を設置。 昭和25年 芦屋市教育委員会を設置。社会教育課を文化課に改組し社会教育係と体育保健係を新設。社会教育委員条例を施行。 昭和26年 社会教育委員を委嘱。社会教育協力委員を委嘱。 昭和27年 体育保健課を新設。社会体育指導員制度を制定。 昭和28年 社会教育委員と公民館運営審議会委員兼務の条例改正。 昭和29年 社会教育事業を公民館に移管。指導課に社会教育係を設置。 昭和30年 公民館運営審議会委員を委嘱。 昭和31年 兵庫県史跡第1号に指定された会下山遺跡の発掘開始。 昭和32年 芦屋市青少年育成協議会が発足。 昭和34年 秘書室に青少年係を設置。 昭和35年 社会教育主事を配置。芦屋ユースホステルが完成。 昭和36年 芦屋市青少年問題協議会条例を制定し委員を委嘱。少年補導所を設置。図書館協議会を設置。 昭和37年 社会教育課を復活。社会教育調査を実施。 昭和38年 新築した市民会館に公民館を移転。青少年課を設置。 昭和39年 市民憲章を制定。青少年センターを新設。ユネスコ会館が開館。 昭和40年 移動図書館巡回開始。打出集会所を開設。 昭和41年 留守家庭児童会を宮川小学校に開設。PTA委託学級を開設。市民プールを新設。社会教育関係団体登録制を開始。 昭和42年 社会教育関係団体登録制を規則化し使用料免除などの援助を開始。小学校校庭開放を開始。市民文化賞を制定。 昭和43年 芦屋大学と連携して婦人大学を開講。野外活動センターを開設。 昭和44年 社会教育だより「ふぉーらむ」を全戸配付。 昭和45年 ルナ・ホールが完成。 昭和46年 岩園小学校をモデル校に指定し校庭開放運営委員会を設置。 昭和47年 体育館・青少年センターが開館。体育青少年課を設置。 昭和48年 第2次社会教育調査を実施。 昭和49年 少年補導所を青少年愛護センターに改称。 昭和50年 公民館は市民会館事務を吸収し市民センターを新設。 昭和51年 市民会館・公民館・老人福祉会館・福祉会館の複合施設を市民センターと呼称。公民館図書室を開設。 昭和52年 コミュニティ・スクール構想を策定。 昭和53年 新設の三条小学校に第1号のコミュニティ・スクールを設置。芦屋市青少年育成愛護協会を設立。 昭和55年 社会教育文化課を新設。青少年愛護センターが独立。 昭和59年 社会教育部を新設。生涯学習状況調査を実施。全庁的な生涯学習関連事業調査を実施。 昭和60年 県委託事業「生涯教育モデル事業」を研究開発。芦屋川カレッジを開設。 昭和61年 芦屋市生涯学習推進会議を設置。 昭和62年 図書館を建設。富田砕花旧居を整備。 昭和63年 谷崎潤一郎記念館を建設。芦屋市文化振興財団を設立。スポーツ振興審議会を設置。 平成元年 芦屋市生涯学習推進懇談会を設置。文化財保護条例を制定し文化財保護審議会を設置。芦屋市コミスク連絡協議会を発足。スポーツ振興基金条例を制定。 平成2年 谷崎潤一郎記念館が佐藤春夫記念館と姉妹館提携。富田砕花賞を創設。文部省指定の生涯学習モデル事業を実施(4年度まで)。芦屋市指定文化財を指定。生涯学習意識調査を実施。芦屋市スポーツリーダーバンクを設置。図書館打出分室を開館。 平成3年 美術博物館を建設。海技大学校市民公開講座を開講。学習情報ガイドを創刊。図書館大原分室を開館。図書館広域利用を開始。 平成4年 子育てセンターを開設。生涯学習フォーラムを開催。芦屋市生涯学習推進基本構想を策定。 平成7年 阪神・淡路大震災による被害のため,青少年野外活動センターを閉鎖。 平成8年 社会教育文化課を生涯学習課に改称。 平成9年 スポーツ・青少年課を新設。 平成11年 県立国際高校オープンカレッジを開講。 平成12年 芦屋市生涯学習出前講座を開設。 平成16年 芦屋市総合公園が完成。 平成17年 文化財課を生涯学習課に統合。 平成19年 「芦屋市市民参画及び協働の推進に関する条例」施行。あしや市民活動センターを開所。 平成20年 芦屋川セカンドカレッジを,芦屋川カレッジ大学院に改称。 V 調査結果にみる芦屋市民の意識  平成20年3月から4月,20歳以上の市民の中から3,000人を対象に「生涯学習に関する意識調査〜日常をより豊かにするために〜」(回収率39.8%,有効標本数1,178人)を実施しました。その調査結果からみる市民の学習活動の現状と特徴は次の通りです。 1.生涯学習の現状について (1)学習や活動について    学習や活動の必要性を感じているかについて,「感じている」は82.1%となっています。前回の平成2年「生涯学習に関する意識調査」では90.9%となっており,「感じている」の割合は減少しています。  過去1年間の間に学習活動,文化活動,ボランティア活動,地域活動などをしたことのある人は56.1%となっています。国の平成17年「生涯学習に関する世論調査」では,したことのある人は47.7%となっており,国より高くなっています。また,前回の平成2年「生涯学習に関する意識調査」では,過去2年間の学習経験者は71.5%となっていました。  学習や活動の必要性を感じている人の割合は,前回より減少しているものの,実際に活動している人の割合は,全国より高くなっていることから,実際に活動に結びついたことで必要性の割合が低下したと推測でき,意識の高い人が多いことがうかがえます。  学習や活動をしたことがある人の活動内容は,全体で「健康・スポーツ」が50.1%,「趣味的なもの」が47.2%となっています。国の平成17年「生涯学習に関する世論調査」では,上位が「健康・スポーツ(22.1%)」「趣味的なもの(18.9%)」となっています。  また,活動内容は,性別,年齢別で特徴があり,男性は「健康・スポーツ」,女性は「趣味的なもの」が高くなっており,20歳代では「職業上必要な知識・技能」,30〜50歳代では「健康・スポーツ」,60歳以上では「趣味的なもの」が最も高くなっています。  そして,学習や活動をしようと思ったきっかけは,「健康・体力づくりのため(43.4%)」「趣味を豊かするため(37.8%)」「他の人との親睦を深めたり,友人を得るため(31.3%)」「興味があったため(31.3%)」が高くなっています。国の平成17年「生涯学習に関する世論調査」では,「趣味を豊かにするため(42.0%)」「他の人と親睦を深めたり,友人を得るため(35.7%)」「健康・体力づくりのため(35.6%)」となっており同様の結果となっています。そのため,生涯の各期にあわせた推進を行っていくことが効果的であると考えられます。   (2)学習や活動の方法について  学習や活動の方法について,集まりや講座などに参加している人は77.0%,そのうち「好きな人同士が自主的に行っている集まり」「市や公民館など公共団体が主催する講演会に参加」で活動を行っている人が高くなっています。また,個人で行っている人は65.7%,そのうち「公共施設(図書館やスポーツ施設)を利用して」活動を行っている人が高くなっています。  活動をするために利用した施設については,各地域で特徴があり,小学校区別でみると,精道,宮川,打出浜,朝日ヶ丘,潮見,浜風では「市立図書館本館」,山手では「市立図書館分館」「市民会館」,岩園では「市立図書館分館」が最も高くなっています。 (3)学習や活動をしていない理由について  学習や活動をできない理由については「仕事や家事などが忙しく時間がない」が57.4%となっています。国の平成17年「生涯学習に関する世論調査」では「仕事や家事が忙しくて時間がない」が53.4%となっており,ほぼ同様の結果となっています。今後,ワーク・ライフ・バランス(老若男女だれもが,仕事,家庭生活,地域生活,個人の自己啓発など,様々な活動について,自ら希望するバランスで展開できる状態。)の考え方や,多様な選択肢の存在,それを支える法制度やサービスなどについて理解することができるよう,広く市民に向けた啓発を行うとともにワーク・ライフ・バランスに関する情報提供を充実させる必要があります。 (4)コミュニティ組織について  コミュニティ組織を知っているかについて,「知っている」はコミュニティ・スクールが44.5%,自治会が71.8%,老人会が53.5%,子ども会が55.2%となっています。  また,コミュニティ組織に参加したことがあるかについて,「ある」はコミュニティ・スクールが14.0%,自治会が26.3%,老人会が5.1%,子ども会が12.1%となっています。今後,活動の拠点ともなるコミュニティ組織について周知を行うとともに,コミュニティ組織に関する情報提供を充実させる必要があります。 (5)学習や活動の情報の入手について  学習や活動をする機会についての情報を,どの程度得ていると思うかについて,「あまり得ていない」が39.2%で最も高く,次いで「ある程度は得ている」が36.2%となっています。  年齢別でみると,70歳未満は「あまり得ていない」,70歳以上は「ある程度は得ている」が最も高くなっています。情報をどこから入手しているかについて,「県や市の広報紙など」が最も高くなっています。しかし,年齢別でみると,20歳代では「インターネットのホームページなど」が高くなっています。今後,学習や活動をする機会についての情報を年代に応じて,情報提供していくことが効果的であると考えられます。 (6)学習や活動への参加意欲について  今後の学習や活動への参加意欲について,活動を「してみたいと思う(続けたい)」が69.6%となっています。国の平成17年「生涯学習に関する世論調査」では「してみたいと思う」が63.9%となっており,学習活動などへの参加意欲が高いことがうかがえます。活動内容について,性別でみると男性では「健康・スポーツ」,女性では「趣味的なもの」が高くなっています。また,学習活動などへの参加意欲は国より高くなっているため,今後,学習活動などに結びつくよう情報提供などを充実させていく必要があります。 (7)学習や活動の方法の意向について  学習や活動をどのような方法で行いたいかについて,「市や公民館など公共団体が主催する講座や講演会に参加」「好きな人同士が自主的に行っている集まり」が高くなっています。  また,希望する学習の程度は,「入門程度」が39.5%,「やや高度」が51.5%,「かなり高度」が5.6%となっており,前回の平成2年「生涯学習に関する意識調査」では,「入門程度」が14.8%,「やや高度」が53.8%,「かなり高度」が23.8%となっています。前回調査と比較すると「入門程度」の割合が増加しており,広く浅く様々な知識を得たい人が増加していることがうかがえます。 2.家庭の教育力について  家庭の教育力が低下していると思うかについて,「ある程度そう思う」が47.0%で最も高く,次いで「まったくそのとおりだと思う」が30.3%となっています。国の平成13年「家庭の教育力再生に関する調査研究」では「ある程度そう思う」が49.4%,「まったくそのとおりだと思う」が17.8%となっており,『そう思う(「ある程度そう思う」と「まったくそのとおりだと思う」の合計)』は国よりも高くなっています。また,低下している理由については,「子どもに対して,過保護,甘やかせすぎや過干渉な親の増加」が49.0%と高くなっています。 3.地域の教育力について  地域の教育力について,「以前に比べて低下している」が58.5%で最も高くなっています。国の平成18年「地域の教育力に関する実態調査」では「以前に比べて低下している」が55.6%となっており,国よりも高くなっています。  「地域の教育力」が低下している理由については,「個人主義の浸透(他人との関与を歓迎しない)」が64.7%で最も高く,次いで「近所の人々がコミュニケーションの機会や場所の不足」が43.4%となっています。 W 本市における生涯学習の課題  生涯学習の内容は,個人の一生涯や全生活に関わるものであり,その範囲は非常に広いものです。そのため,以下の課題を踏まえる必要があります。 1.生きがいづくりとしての生涯学習  生涯学習は,人々の生活から生じる課題を解決する学習や活動です。こうした生涯学習の実践は,自分自身をよく知ることであり,継続的に取り組むことで,技能や知識が増すだけでなく自己発見,自己革新につながるものです。  また,生涯学習は,学習や活動を通して知識や技術を得るだけではなく,多くの人との出会いがあり,交流を深めることが可能です。この出会い・交流は新たな自分の生きがいを見いだすと同時に,コミュニケーションの輪を地域社会の中に広げることができます。そして,ともに活動する仲間という人間関係が形成され,人生をさらに豊かなものとすることができます。今後,一人ひとりが生きがいに関わる学習や活動の場を持つ必要があります。 2.健康づくりとしての生涯学習  学習や活動をしたことがある人の活動内容は,今回の調査結果では「健康・スポーツ」が最も多くなっています。健康づくりは,よりよく生きるための根本的な課題であり,生涯学習の中心的なテーマでもあるといえます。世界保健機関(WHO)は,健康を「健康とは身体的,精神的,社会的に完全に良好な状態であり,単に疾病または虚弱の存在しないことでない」と定義しています。この身体的,精神的,社会的な健康を得るためには,自分の健康状態について学び,精神的健康,社会的健康を求め,学んでいくことが必要です。 3.まちづくりとしての生涯学習  自ら学んだ成果を活かし,それによって地域に貢献し活躍していくことが,まちをさらに活性化させることにつながります。国においても「各個人が自らのニーズに基づき学習した成果を社会に還元し,社会全体の持続的な教育力の向上に貢献するといった『知の循環型社会』を構築することは,持続可能な社会基盤となり,その構築にも貢献するもの」とされています。学んだ成果をまちづくり政策の立案・実施に活かせるよう,市民からの主体的で積極的な参加が必要です。 4.異世代交流としての生涯学習  子どもにとって,体験を豊富に経験することで大人への理解が深まります。そのために,人と関わりを持つことが必要であり,異世代交流は有効です。放課後子どもプランの推進は,子どもの学習・体験の場であると同時に異世代交流を促進するものとして各地域での実践が期待されます。こうした交流の場は,高齢者が自分の経験や知恵,知識,文化などを継承していく場として期待することができます。 5.高齢社会に対応する生涯学習    高齢期は,家庭や地域社会の中で健康を維持しながら暮らしていくとともに,自らがこれまで培ってきた知識や技術を社会に還元していく時期でもあります。高齢者が今までに培ってきた知識や技術を地域社会に提供し,役立てることは,自らの生きがいにもつながるため,家庭や地域社会などが協力しながら積極的な社会参加を支援する必要があります。  また,高齢期を豊かに過ごすためには,社会の変化にあわせて高齢者自らが学ぶ必要も生まれてきています。そのため,高齢者が主体となり,課題に対処するための学習機会の充実が求められています。 6.少子化に対応する生涯学習  少子化が進み教育の重要性が高まる中,家庭の教育力,地域の教育力の低下が懸念されています。今回の調査結果でも家庭の教育力,地域の教育力が低下していると思うと回答された人は国の調査よりも高くなっています。地域の教育力が低下している理由については「個人主義の浸透(他人との関与を歓迎しない)」が高くなっています。子どもは「社会の宝」であり,子育てを地域社会全体で担っていく必要があります。  地域社会は,様々な学習・体験の場であり,親の育児負担や不安の軽減,さらに異世代交流の場となる必要があります。今後,保護者に対するきめ細やかな家庭教育支援を積極的に進め,地域コミュニティや企業を含む社会全体で家庭教育を支えていく環境づくりを進める必要があります。 7.学習や活動について    学習や活動の内容や情報の入手方法などは,年代によって特徴があることから,年代ごとにターゲットを絞り,活動内容や情報提供方法などを検討する必要があります。そして,活動の拠点ともなるコミュニティ組織について周知を行うとともに,コミュニティ組織を通じて地域住民に情報提供し,組織を活性化する必要があります。  また,既存施設の活用策については,地域ごとの特性を踏まえて検討する必要があります。  なお,「仕事や家事などが忙しく時間がない」との理由で活動ができていない人が約半数いることから,ワーク・ライフ・バランスの考え方や,多様な選択肢の存在,それを支える法制度やサービスなどについて理解することができるよう,広く市民に向けた啓発を行う必要があります。