(4)(5) 広報あしや 平成30年(2018年)11月1日号 No.1239 ヒトとつながる・マチに関わるってナニ? ~都市における「市民参画・協働」~ 渡辺 直子 × 山崎 亮 問い合わせ 市民参画課 ☎38-2007 今、いろんな地域で「市民主体のまちづくり」といったことが進められています。 芦屋市のような都市において、市民の皆さんが「ひととつながる」あるいは「まちに関わる」ことについて、現在進行中のプロジェクト「芦屋まちデザインラボ」「MIYAZUKA♡PROJECT」に携わっているお2人にお聞きします。 都市における「市民参画・協働」 渡辺 全国的には高齢化や人口減少などの問題により、地域の住民同士が協働したり行政が市民参画を考えたりしていますが、芦屋はまだ課題に直面していないので、その流れは見えていないかもしれません。 山崎 そうですね。 例えば中山間地域は、ご近所さんは顔見知りだし、地域の行事とか消防団や雪かきなど自分たちで何とかしないといけないことがたくさんあったりするので、地縁のような必然的な関係性があります。歩けない人がいたら「自分も通る道だから」ということで周囲の人が手伝ったり、切迫した問題に「とにかく何とかしないと!」という意識で、住民の連携によってさまざまな取り組みが生まれます。ただし都市部ではこうはいかない。ご近所さんの状況も見えにくかったり、人とつながらないで生きていこうと思えば本気でそれができたりもする。 でも実は、自分が高齢になったら周りの人の助けが必要だし、介護保険料や税金なども使います。今の生活では関係ないと思っていても、納めたり使ったりする税金などを通じて、周囲の人と関係しているのに、その点が非常に見えにくいことが、相互の理解を阻んでいるという気がします。 地縁が薄い都市において「つながり」をつくるためには、「楽しい」とか「趣味が合う」などのきっかけ を通じて、価値観を共有できる人と知り合えることが大切だと思います。 渡辺 私もちょっと踏み出して動いてみたら、芦屋のまちの中がよく見えるようになって、周りの人との関係も変わっていって非常に面白いと感じています。私の場合、きっかけは犬を飼ったことです。些細なことですが、そこから輪が広がって、その人たちとワークショップをしたりして暮らしぶりや地域への思いが少し変わりました。 山崎 価値観が近い人と出会えるかどうかはとても大切ですね。 最初からいきなり社会課題を解決するという「つながり」を作ろうと思うと難しいと思うので、もっと簡単なことからつながりを作っていったらいいと思います。まずは「こんな人とつながりたい」とか「こんな人と友達になりたい」くらいでいい。 渡辺 そのためには、自ら動くことも大切ですね。自ら企画することが苦手ならば、他人がつくったフレームに参加することも一歩です。でも、お客さんとして参加するだけではなく、主体的に動くと、より興味や関心とか熱量が高くなるのは事実です。 まちの暮らしの見える化を図る 芦屋市 世間では人口減少や少子高齢化の問題があるし、市民のライフスタイルが多様化しているので、社会の課題が複雑になっています。いずれは行政だけでは解決できない問題も多く出てくることも考えられます。 山崎 そんなときに市民の関わりがとても重要ですよね。 自分たちの周りにある課題を自分たちで解決しないといけなくなったとき、先ほど言った「価値観の近い人」との「つながり」が非常に役に立ちます。そのときのために仲間をつくっておくことはとても大事ですね。 渡辺 確かに今は市民の暮らし方、楽しみ方がちょっと見えにくいのが残念ですよね。 山崎 芦屋にも、市民の生活を通じて見えてくる個性や多様性があるのに、「高級住宅街」のイメージが先行して他の良い部分が見えにくくなっているところがあると感じます。 例えばロンドンから20分から30分離れたまちが個性的であるように、三宮や梅田から20分くらいの距離にある芦屋も、もっと独特の個性が見えていてもおかしくないんですけどね。 芦屋の他の部分も見えたら芦屋に住む人がつながる機会が増え、地元で仲間づくりができる環境になると思います。 渡辺 芦屋は連休とかになるとまちに人が少なくなりますね。そのせいか、休日にお店が閉まっていることもあります。車でどこかへ行ったり、海外に行ったりする方が多いからですかね。 山崎 自分の家の近くに行きつけのお洒落なカフェがあるとか、休日に気の置けない友達と楽しく過ごすことが「かっこいいんだ」という感覚になるといいですね。市民の価値観が海外旅行や車でどこかに行くことにばかりあると、経済はどんどん地域から出ていくし、まちにはいつまでたっても魅力的なお店が育たなかったりする。 行政の仕事は「つながり基盤」           をつくること 渡辺 「魅力的なお店」とは「人が真ん中にいるお店」のことですよね? 山崎 そう。芦屋のまちで「人と人がつながれる」ことが重要で、そのために「つながり基盤づくり」が必要ですね。自分の人生を豊かにするために、何か面白い仲間とつながっていける基盤をちゃんとつくっておくと、そこからいろんな活動が生まれることになります。 きっかけは教育でも子育てでも、エコなライフスタイルとかチャリティショップでもいい。住民やお店が行うワークショップや、行政の住民参加型事業の場を使ったりしてできるところからやればいい。行政の仕事はそうした市民が何かコトを起こせる場をたくさんつくること。それが市の最も価値のあるインフラになっていくと思います。 渡辺 住民も参画することで意識が変わります。気に入るテーマが見つけられてなかったら、自分でやり始めたらいい。何かをやっていると、必ず「面白そうだね」という人と出会えますから。他市で住民参加の活動をしている人に、「人口9万人くらいだと、人とつながりやすいし行政ともつながりやすい規模で羨ましい。」と言われたこともあります。 芦屋市 そうするためには、個人の生活を充実させるところからいろんな「つながり」をつくるということが大切ということですか? 山崎 そういうことだと思います。 「一緒にやっていきましょう」ということを、高齢の方がやれば地域包括ケアになるかもしれないし、若い人たちであれば地域ブランディングのまちづくりになるかもしれない。両者がやれば地域共生社会と呼ばれるものになるのかもしれないですけど。 スマートフォンが出てきたことで、インターネットがより身近になり、日々の買い物でわざわざ三宮や梅田に出る頻度が減ってきている。大都市に人が集まること自体が幻想になってくるかもしれないですよね。ただ、ネットでクリックすることで商品が届くだけではない物や場があることが重要な気がしますね。休日に、地元でダラダラ仲間と一緒にビールを飲んだり話ができたりするね(笑) 「つながり基盤」をつくるために、芦屋では市民と議会と行政の3者がそれぞれできることがあると感じます。行政は楽しそうだな、お洒落だなと感じる住民参加の場をどんどん作っていくのが仕事。議会にはつながり基盤を作るための新しいことを考えて情報やアイデアを出してもらいたい。市民はその中で「つながり」づくりの練習をして、どこにもないほど芦屋を面白くする。こんな構図ができればすごいことですよね。 市民参画協働アドバイザー  山崎 亮(やまざきりょう) 氏 studio-L代表 建築・ランドスケープ設計事務所を経て、2005年に 「studio-L」を設立。地域の課題を地域に住む人たち自らが解決するためのコミュニテイデザインに携わる。慶応義塾大学特別招聘教授。博士(工学)。2018年4月芦屋市市民参画・協働アドバイザー に就任。 市民参画協働推進会議会長  渡辺 直子(わたなべなおこ) 氏 フリーランスのエディター&ライター。地域活性化のプロジェクトにも多数関わり、2014年に「瀬戸内しまのわ2014」で、2018年に「あきた年の差フレンズ部」(いずれも市民活動の啓発プロジェクト)でグッドデザイン賞を受賞。平成29年度より芦屋市市民参画協働推進会議会長に就任。 ■あしやトライあんぐる放送時間 特集:あしやキッズスクエア ①午前9時②正午③午後3時④午後6時⑤午後10時〈15分〉  [問い合わせ]広報国際交流課 ☎38-2006 芦屋まちデザインラボのゼミと MIYAZUKA♡PROJECTのワークショップを開催中! みんなで学び、考える、 芦屋のまちのこと。  今年度、あしや市民活動センターと旧宮塚町住宅をリノベーションします。それぞれの施設を「どのように活用できるか」「自分たちは何をやるのか」といったことを検討する市民参加型のゼミ・ワークショップを開催しています。 あしや市民活動センター 「デザイン」をキーワードに、「芦屋まちデザインラボ」として、まちや暮らしに関わる活動を考えるゼミを開催しています。 参加者の声 高田 奈津子さん 新しいチャレンジがしたいと思い参加しました。きっかけは、学童保育の問題を身近に感じたことで自分たちが望むものは、自らつくれば良いと思いました。昔のご近所付き合いのように、多世代が交流し、つながれる場をつくれたらと考えています。 旧宮塚町住宅 「女性の活躍も含めた市民の活躍」を考える「MIYAZUKA♡PROJECT」のワークショップを開催しています。参加者それぞれの「活躍」とはどういったものかを考える取り組みです。 参加者の声 ハウル白川 泉さん 今回のワークショップでは、参加者の皆さんとお知 り合いになれたことが一番の刺激であり収穫でした。すばらしい企画に感謝しています。歴史的建造物を活用するという英断に応えられるよう、市民の皆さんと一緒に智恵を絞って素敵なプランにたどりつけたらと思っています。 それぞれの取り組みには、「何かをしたい」という想いを持つ皆さんにお集まりいただいています。ここから新たな取り組みが生まれてくるかもしれません。ゼミ・ワークショップの模様は、市ホームページやフェイスブックで公開していますので、ぜひご覧ください。 ■11月は労働保険適用促進強化期間です 事業主は労働保険の加入手続きを。 [問い合わせ]西宮労働基準監督署 ☎0798-26-3733