02-03-04 特集 芦屋の給食をめぐるおいしいつながり 芦屋の給食のおいしい理由は、「すべて手作り」「食材にこだわっている」などのほかにも、まだまだあります。岩園小学校の給食を取材してみると、食材を納入する人・作る人・食べる人・支えて応援してくれる人など色々な人のつながりで「おいしい」給食が作られているのがわかります。 今日も「おいしいつながり」で芦屋の給食ができました!さあ!みんなで「いただきます!」 栄養士さん・調理師さんとの「おいしい」つながり 愛情たっぷり手作り給食 自校式調理 ルウやドレッシング、プリンやゼリーなどデザートは当日に手作り。タケノコのあく抜きやコロッケのマッシュポテトも給食室で作っています。 こだわっています! 給食の食材 地産地消を大切に米は100%兵庫県産。毎年各小学校で、積極的に兵庫県産の食材を使用する「地産地消週間」もあります。 豊かな食体験が味覚と心を育みます 「食」からの学び そら豆のさやむきや、とうもろこしのひげとりなど、調理過程の体験を通して感謝の心や命の大切さを学びます。 旬を大切に、行事食・郷土食・多国籍料理も多く取り入れています。 徹底した衛生管理 食の安心・安全 衛生マニュアルを作り、衛生管理に努めています。子どもたちが食べる前に、味やにおい・異物の有無を校長が確認のため検食しています。ハムやちくわなどの加工品は添加物が少ないものを使用し、食物アレルギーにも配慮しています。 毎日 大きな「ごちそうさま」を      もらえるように頑張っています! 給食を取りに来る時の期待に満ちた子どもたちの顔。食べ終わった食器を給食室へ返しに来るときの「ごちそうさま」の声。 「ごちそうさま」の大きさはその日の給食のバロメーター。おいしかった日ほど、声は大きくなっていきます。子どもたちの反応が素直で面白いなぁと思う瞬間です。1日に作る給食は約850食。それぞれの学校で作っているので、子どもたちが食べたい物のリクエストには応えやすいです。 最近のヒットは“ぼっかけチャーハン”。新しいメニューは、子どもたちとの会話などをヒントに栄養士と調理師がアイデアを出し合いながら作っています。 子どもたちとの 「おいしい」つながり 毎日おいしい給食    ありがとうございます! 今回のメニューではトッピングのレンコンのカリカリが牛丼に合っていて、おいしかったです。私の好きな給食のメニューはカレーやミンチカツ、米粉パンなど… 将来は、給食のようなおいしいメニューを自分で作ってみたいです! 食材を届ける皆さんとの「おいしい」つながり 安全でおいしい手作り豆腐を 有限会社 村上哲郎豆腐商店 村上哲郎さん 手作り豆腐を作り続けて55年。毎朝3時から豆腐作りをはじめ、1箱1箱昔ながらの作り方で丁寧に作っています。スーパーなどで並んでいる大量生産された豆腐(充填豆腐)とは違い、村上さんが作る豆腐は、タンパク質が多く含まれる大豆と安全に処理された井戸水を使った、豆の風味が存分に味わえる無添加豆腐。 「市内で手作り豆腐を作っている店はうちだけになってしまいました。栄養士さんからはいつも、辞めんといてと言われますよ」と笑顔の村上さん。「芦屋の子どもたちには、本当に安全で美味しい豆腐を食べて大きくなって欲しい」その想いで、今日も出来立ての豆腐を学校へ届けています。 美味しいものを美味しいと思える舌を育ててほしい 株式会社 なかすじ商店 金田一さん 昭和23年から続く地元に愛されるお肉屋さん「なかすじ商店」で肉への知識を日々研鑽し続けて48年。 「なかすじ商店」のお肉は、金田さんが長年培ってきた経験をもとに目で見て“美味しい”と思う黒毛和牛の雌牛を一頭買いで仕入れているので、良質でリーズナブル。「芦屋の学校給食は、昔から美味しいと有名。この文化を我々納入業者・栄養士さん・調理師さんたちみんなで守っていかなあかん。この飽食の時代、芦屋の子どもたちには、本当に美味しいものを食べて、美味しいと思える舌を育てて欲しい」と学校給食への熱い思いを語る金田さんは、栄養士や調理師からも信頼されてます。 新鮮な野菜を毎日学校へ やさい家族 藤田芳子さん 昭和40年から青果一本でお店をやってきた勘を頼りに、毎日野菜を“手に取って・見て”新鮮で美味しいものを買い付けています。 「今朝、買い付けた新鮮な野菜をその日に調理しているので、おいしくて栄養も豊富、芦屋の給食のいいところですね。スペシャル牛丼の玉ねぎは淡路産で甘く、かきたま汁に入っている神戸旬菜の小松菜は、茎も太くておいしいですよ」と語る。 もちろん、自身も野菜が大好きで「野菜から毎日エネルギーをもらっています」と元気いっぱいの藤田さんから子どもたちへ。「これからの芦屋を担っていく子どもたちには、給食を好き嫌いなく全部食べて、風邪もひかないで元気で勉強してもらいたい。そうなってほしいと思っています。」 一流料理人との「おいしい」つながり 和食給食を通して伝えたい 「スペシャル牛丼」はミシュランガイドで2010年から現在まで2つ星を獲得している名店「京料理 たか木」の高木シェフが考えたメニュー。芦屋の学校給食へ熱心に関わる高木シェフへ給食にまつわる質問をしました。 「スペシャル牛丼」はどうしてできた?  芦屋の小学校で毎年開かれる授業「味覚の一週間」。和食・フレンチ・イタリアンなど市内に店を構える8人のシェフが各小学校で「味覚」の授業を行い、栄養士と一緒に「コラボ給食」を考えます。スペシャル牛丼は、使う食材などを工夫して、いつでも給食に出せるメニューとして考えました。他にも色々な和食のメニューを栄養士さんと一緒に作っていますよ。 学校給食に関わる理由は?  昔はお米が中心の食生活でしたが、今では1日お米を食べない人も沢山います。これでは日本の食文化がダメになってしまう。飽食の時代だからこそ、農作物を作る農家さんへも恩恵が行く社会になってほしいと思います。そのためには子どもたちに“食”の大切さを伝える必要があります。毎日食べる給食は、日本の食文化を伝える絶好の機会だと思い、積極的に関わるようになりました。 学校給食で感じたことは?  私は日本料理人として、ダシ(うま味)を使った料理の大切さを伝えたいと思っています。でも給食室はダシをとる設備になっていません。当日調理した料理しか出せないので、食材に十分味を染み込ますことができず、美味しい和食を提供するのが難しいと思います。この環境のなかで、栄養士・調理師さん は上手に工夫しながら、美味しい給食を作るため、頑張られていると思います。 芦屋の学校給食へ ひとこと  芦屋でお店を構えさせてもらっているからには、地域貢献は積極的にしたいです。これからも、味覚の一週間などさまざまな機会を通じて芦屋の学校給食に関わっていければと思います。芦屋の学校給食がもっともっと良くなるためなら、私の技術と知恵を惜しみなくお伝えしたいと思っています。 高木一雄(たかぎ かずお)氏 大阪「料亭北乃大和屋」に入店後、佐名木孟氏と「山荘京大和」へ移り、副料理長を経て2005年芦屋市に「京料理 たか木」を開店。「和食給食応援団」西日本代表を務め、全国各地の学校で講演や調理実習などを通して、次世代の子どもたちに「和食」や地産地消の大切さを伝えている。 映画監督との「おいしい」つながり 世界に誇れる芦屋の給食 「芦屋の学校給食」を題材に「食」を通して「絆」を描くヒューマンドラマが全国のスクリーンで2020年秋に公開予定。この作品の脚本・監督を務める白羽弥仁監督にお話を伺いました。  2017年発売の「芦屋の給食」という本を見て、学校ごとに作られている給食へのこだわりを知り、芦屋市がいま世界に誇れるものは“これだ!”と思いました。  食育という言葉をよく耳にするようになりましたが、子どもたちの“食べる”ということは身体と同時に、精神も形成するのだと思います。大袈裟な話ではなく、食が人間を形成していく。これだけ力を入れた給食を出している芦屋の学校では、「必ずいい子どもたちが育っているはずだ」と思い、2018年より取材をスタートさせました。  市内の小学校をまわり栄養士さん、調理師さんへのインタビュー・調理の現場や子どもたちが教室で給食を食べている様子を取材して、給食も何度も頂きました。食べるたびに「美味しいなぁ」と思うのと同時に、どの献立も栄養面でもよく考えられていると感心しました。  保護者のかたへのインタビューで面白かったことは、給食の話題が親子のコミュニケーションツールになっていることです。学校から帰った子どもたちの第一声が“今日の給食は〇〇食べた”からはじまる。子どもたちの学校生活のなかで給食が大きなウエイトを占めているのだなと思いました。  私が撮る映画はヒューマンドラマ。ドキュメンタリーのような食の安全や食育の問題を直接取り上げるものではありません。学校給食を取り巻く人々、給食を作る人や食べる子 どもたちを描いていきます。この映画を見た全ての人が楽しい気持ちになれるような映画を作りたい、現在、脚本を何度も改稿している最中です。実際の撮影ではセットを使わず、市内でのロケを中心に行います。どの小学校を舞台にするのかは、まだ決まっていませんが、市内のどこかの小学校で撮影する予定です。  世界の学校給食も調べてみましたが、先進国でも給食に力を入れていない国もあれば、イタリアなど“さすが食の都”と思わせる給食もありました。それらと比べても、芦屋の給食は間違いなく世界に誇れるものと思います。 今回のこの映画を通じてそのことを世界へ発信していくつもりです。 白羽 弥仁(しらは みつひと)氏 1964年芦屋市生まれ(神戸市在住) 日本大学藝術学部演劇学科演出コース卒業。 セピア・タウン(1984年)/She's Rain(1993年)/能登の花ヨメ(2008年)/神戸在住(2015年)/ママ、ごはんまだ?(2017年)の監督を務め、その他TVのCM制作も手がけている。