02-03-04 特集 認知症にやさしいまちへ。 その人らしさをみんなでサポート 三木達雄さんは、営業マンとして定年まで企業に勤め、定年後は民生委員として10年間地域活動へ積極的に参加していましたが、70歳を過ぎアルツハイマー型認知症の診断を受けました。 現在は要介護認定を受け、介護保険制度でデイサービス(週3日)とショートステイ(月2回)を利用しながら、弘子さんと夫婦2人で暮らしています。 弘子さんは、公益社団法人『認知症の人と家族の会』兵庫県支部に携わって38年。夫の介護をしながら、認知症患者やその介護家族の援助・認知症の正しい理解を呼びかける活動を行っています。 認知症と生きるということ 三木さんご夫妻 『認知症の人と家族の会』  弘子さんが認知症と向き合うようになったのは、達雄さんの母親の介護がきっかけ。昭和51年にアルツハイマー型の認知症と診断されてから15年間介護しました。 当時は認知症に対する社会からの理解や支援も乏しく、家族が認知症になったことを世間には隠すような時代でした。「夫は単身赴任で、一時期は病気の父親の看護と重なり、4人の弟達夫婦と協力して介護していたのですが、お互い認知症の理解不足から、介護での意見のくい違いがあり、精神的に追い詰められ悩みました。」  そんな時に、『認知症の人と家族の会』の前身となる『家族の会』の存在を知り、わらにもすがる思いで手紙を出しました。「介護は誰かが中心となって、みんなでしないといけない。1人で抱え込んでいては絶対に無理。」とアドバイスを受け、ヘルパー制度などを利用しながら介護をするようになりました。『認知症の人と家族の会』には非常に助けられたそうです。 夫の認知症に寄り添う    達雄さんの母親を看取り、夫婦だけの生活で老後は支え合いながら穏やかに過ごせると願っていた矢先、今度は達雄さんの異変に気付きます。はじめはテレビで何度も流れる同じニュースを見ては「初めて聞くニュース」と会話するなど、些細なことからでした。そのうち知人との待ち合わせ場所に行けなくなることが増え、大学病院に受診。診断の結果はアルツハイマー型の認知症。「ひどくショックを受けましたが、お母さんを介護した経験があったので、気持ちの余裕はありました。夫が初めてなら、こんな穏やかな気持ちではなかったと思います。認知症になり夫はとても不安だと思います。だから安心して生活ができるように優しく寄り添うように心がけています。」それでも、24時間達雄さんを気にかける生活は、ストレスが溜まります。そんな時は「お父さん私ちょっと寝ますね」と伝えて寝るそうです。それが弘子さんのストレス解消法。  インタビューの間、達雄さんはニコニコしながら時折こちらへ話しかけてこられて、とても楽しそうな感じが伝わってきました。  「家でもこんな感じで話かけてくるので、できるだけ私もテーブルに着いて話を聞くようにしています。そうじゃないと、無口になってしまいますからね。私が元気で介護をできるうちはデイサービスやショートステイなどを利用しながら、自宅で一緒に過ごしたい。苦労も掛けられますが、施設に入って完全に離れてしまうのは寂しいですし、夫もそう思っていると思います。」と優しい笑顔。 弘子さんが考える介護のポイント  「認知症と言っても人によってケースは色々。『あじさいの会』などに参加して悩みを話し、ほかの人達とコミュニケーションを取ること。家事も時には手抜きをして、晩ごはんは、お惣菜を買ってきてもいいし、最近は介護食もあります。 何よりも大切なのは、介護者自身の健康です。芦屋市では、無料の健康診査もあります。介護保険制度のサービスを利用しながら、少しの時間でもいいので自分自身の時間を作り、上手にリフレッシュしましょう。」 三木さんを支える 認知症サポートスタッフ ケアマネジャー 田辺 美貴子さん ご自宅に伺った時は、達雄さんのお話しに笑顔で相槌をうちながらコミュニケーションをとっています! デイサービス 齋藤 朋子さん 達雄さんのデイサービスでの1日は、発音の良い「グッドモーニング」から始まります。挨拶の声の大きさが元気のバロメーターです。 ショートスティ 小泉 英一さん 笑顔が素敵なジェントルマンの達雄さん。いい存在感が周りの雰囲気を良くしています。 認知症は相談できます! 認知症相談センター 認知症地域支援推進員  認知症の人にインタビューをしたところ「自分の異変に最初に気付いたのは他でもない自分だった」という人が大勢いました。(その後、専門的治療や専門機関への相談に多くの時間を要していました。)ためらい、戸惑い、葛藤、絶望・・・。言葉では表現できない気持ちを密かに抱えておられたのだろうと想像します。  「私は高血圧と糖尿病の持病があります」等、自身の病気を打ち明ける人は多いですが、「私は認知症の診断を受けています」と聞くことはあまりありません。友人や近隣の人に打ち明けていない人もいます。  認知症は“孤独の病”と表現されます。その理由は、「認知症になったら自分らしく暮らすことをあきらめることになる」「自分は認知症にならないので関係ない」「認知症になったら何もわからないから周囲の人が判断すれば良い」などの誤解が浸透しているからです。  しかし、認知症の人を取り巻く地域社会が変われば、認知症の人がいきいきとその人らしく暮らしていくことはできます。市内には、認知症相談センター(高齢者生活支援センター)が4カ所あり、認知症の人や家族への相談支援と必要な支援を提供するためのネットワークやしくみづくり、啓発活動を行っています。  私たち認知症地域支援推進員に、認知症の人の「声」を届けてください。 認知症相談センター(高齢者生活支援センター) 高齢者のための身近な総合相談窓口です。 認知症やそのほかどんなことでもお気軽にご相談ください。 西山手高齢者 生活支援センター ☎25-7681 山芦屋町9-18 【担当地区】 奥山・奥池町・奥池南町・山手町・山芦屋町・東芦屋町・西山町・三条町・月若町・西芦屋町・大原町・船戸町・松ノ内町・業平町・上宮川町・三条南町・前田町・清水町 潮見高齢者 生活支援センター ☎34-4165 潮見町31-1 【担当地区】 若葉町・緑町・潮見町・高浜町・新浜町・浜風町・陽光町・海洋町・南浜町・涼風町 東山手高齢者 生活支援センター ☎32-7552 朝日ケ丘町6-9 【担当地区】 六麓荘町・岩園町・楠町・翠ケ丘町・親王塚町・朝日ケ丘町・東山町 精道高齢者 生活支援センター ☎34-6711 呉川町14-9 【担当地区】 茶屋之町・大桝町・公光町・川西町・津知町・竹園町・精道町・浜芦屋町・伊勢町・松浜町・平田北町・平田町・打出小槌町・宮塚町・若宮町・宮川町・浜町・西蔵町・呉川町・春日町・打出町・南宮町・大東町 認知症の人をささえる家族の会「あじさいの会」 「あじさいの会」世話人代表 安宅桂子さん  毎月定例会を開催し、介護についての悩みなどを話し合い、情報交換をしている会。現在会員は57人。月により、市の福祉部や高齢者生活支援センター、介護保険施設などの職員も参加して、経験や情報を分かち合いながら、より良い介護を目指しています。親の介護、兄や姉の介護、最近は高齢のご夫婦どちらかの介護が多くなり、介護をしているご本人も共に支える会になりました。  あじさいの会の世話人代表の安宅さんも、認知症のお義父さんの介護で大変な思いを経験され『あじさいの会』に参加して救われた1人。  「介護の大変さは経験しないと分かりません。初めて参加される人の多くは、介護の悩みを他人に話すのを遠慮されます。他の参加者の経験談を聞くうちに、大変なのは自分だけじゃないと気付いて、どんな小さな事でも話していいんだと心を開いて、お話していただいています。  心にたまった悩みを話すことで、気持ちが楽になり、不思議と優しくなれる気がします。認知症本人の不安な気持ちも理解できるようになると、介護が少し楽に感じられます。 あじさいの会は、相談窓口の関係機関の参加もあります。介護でお悩みのかたは、ぜひおいでください。」 認知症の人をささえる家族の会「あじさいの会」 ■日時 毎月第3月曜日・午後1時30分     ~3時30分 ■会場 保健福祉センター2階 団体会議室1 ■問い合わせ 社会福祉協議会 ☎32-7525 打出いこいの場「まごのて」  2011年に見守りのモデル事業としてスタートして約8年。打出商店街の中にあり、ご近所の高齢者や通りがかりの人、子ども連れのお母さんや認知症の人など、どなたでもつどえる地域のいこいの場です。 『まごのて見まもり協力員』の登録者数は18人。協力員たちが主体となり活発にアイデアを出し合って、企画や運営をしています。  地域の見守り・おしゃべり場・社会福祉士による福祉相談・お茶会のほか、手芸や絵手紙の教室も開催しています。 認知症は早期診断と早期治療が大切 認知症は高齢者にとって特別な疾患ではありませんが、早期診断・早期治療が大切です。 正しい知識と理解について芦屋病院「脳神経センター」の片岡先生にお話を伺いました。 芦屋病院 脳神経内科部長 片岡 政子 先生  認知症とは、脳神経細胞の働きの障害でこれまでできていたことができなくなり社会生活に支障をきたした状態をいいます。我が国では認知症患者数が急増しており、65歳以上の高齢者の7人に1人、85歳以上では3人に1人が認知症とされています。認知症は高齢者にとって決して特別な疾患ではなく、誰もがなり得るものです。  認知症をひきおこす病気でもっとも多いのがアルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型変性症といった神経変性疾患で、次に多いのが血管性認知症です。アルツハイマー型認知症などの神経変性疾患は、脳の中に異常な蛋白質がたまり、徐々に神経細胞が死んでしまうことが原因とされていますが、その詳しい原因はまだわかっていません。血管性認知症は高血圧症などによる動脈硬化から脳循環不全、脳卒中(かくれ脳梗塞も含め)をきたすことで発症します。  しかしながら、認知症の原因は他にもいろいろあり、特に正常圧水頭症、硬膜下血腫、高齢者てんかん、甲状腺機能低下症など、きちんとした診断後の治療により顕著な回復が見込める治療可能なものが含まれます。ぜひとも見逃したくないものです。これらの治る認知症を見逃さないためには、医療機関を受診し、正確な診断を受けることが何よりも大切です。  認知症疾患は病気によって治療法や対策は異なりますが、どんな病気であっても早期の診断、治療が有効です。 芦屋病院では 脳神経センター(脳疾患予防外来)を新設 社会の高齢化とともに急速に増えてきた高齢者特有の脳疾患である3つの疾患にとくに力を入れています。  ①認知症疾患  ②成人てんかん(意識消失、ぼーっとする、もぞ   もぞするなど)  ③神経変性疾患(パーキンソン病など神経難病) 疾患の診断後は、外来での治療はもちろん、ご家族へのアドバイス、必要なリハビリテーション、介護サービスなどを導入し、認知症があっても住み慣れた環境で、患者さんのより良い日常生活の維持とご家族の介護負担軽減のために、サポートいたします。 ※脳疾患予防外来は完全予約制です。受診希望の方は電話で地域連携室へ。 問い合わせ 芦屋病院 地域連携室 ☎31-2156 認知症の早期発見とサポート ウェブで簡単 これって認知症? 簡易チェックサイト インターネット上でいくつかの簡単な質問に答えるだけで、認知症の可能性をチェックできるサービスです。家族・介護者向けとご本人向けの2種類があります。 ホームページ、スマートフォンから簡単にチェックが できますので、ぜひご利用ください。 認知症の情報をまとめた冊子 「認知症ほっとナビ」 認知症と診断された人・共に生きるご家族・認知症に対して不安な人など、さまざまな人が利用できるサービスや制度をまとめています。 市窓口や各高齢者生活支援センターで配布しています。 認知症高齢者 見守りシステム 認知症高齢者が行方不明になった時に、早期に発見するためのものです。市に登録された事業者のシステムを利用する人は、助成が受けられます。 ■助成額 導入費用(限度額2,000円) ■登録事業者  一般社団法人セーフティネットリンケージ  ☎011-572-6865 ■申し込み 印鑑・導入費用の領収書を下記へ  ※詳細は、ホームページをご覧ください。 問い合わせ 高齢福祉課高齢福祉係 ☎38-2044 認知症サポーターになりませんか 認知症サポーターとは、認知症の人や家族を見守る「応援者」のことです。 認知症を正しく理解するための認知症サポーター養成講座を受講した人へ、認知症サポーターである証として「オレンジリング」を進呈します。 ■内容 5人以上の集まり(自治会、学校、商店街、企業、サークル、ボランティア、有志など)にキャラバン・メイト(講師)が出向き、認知症の正しい理解・認知症の人の行動や心理・支援や対応する際の心配りなどの講座をします。 ■費用 無料(会場費は主催側で要負担) ■時間 90分程度 ■申し込み&問い合わせ  社会福祉協議会 ☎32-7525