02-03 特 集 誰もが安心して暮らせる共生社会の実現に向けて 「合理的配慮」を知ってますか? 令和3年1月1日から「芦屋市障がいを理由とする差別のない誰もが共に暮らせるまち条例」が施行されます  障がいのある人が、日常生活や社会生活の中で感じる生活のしづらさや不安。これらは、社会によって つくり出されたものが多く、周りの人の理解やサポートで、不便さや困難さが解消されることがあります。  障がいの有無で分け隔てられることなく、お互いの人格と個性を尊重し、みんなで一緒に生きていく 社会を実現するためには、「障がい」・「障がいのある人」に対する理解や考えを深めていくことが大切です。 問い合わせ 障がい福祉課 ☎38-2043 [ファクス]38-2178・38-2160 障がいを理由に差別するって          どんなこと? 障がいがあることで、障がいのない人たちと異なる扱いを受けて困った、自分の障がいにあった必要な工夫や、やり方をしてもらえなかったことはありませんか。 「障害者差別解消法」や「芦屋市障がいを理由とする差別のない誰もが共に暮らせるまち条例」では、「不当な差別的取扱い」と「合理的配慮をしないこと」の2つの差別を禁止しています。 「不当な差別的取扱い」の禁止 障がいのある人に対して、正当な理由がないのに入店を断るなど、障がいのない人と違う扱いをしたり、場所や時間を制限したり、障がいのない人には付けない条件を付けて、障がいのある人の権利利益を侵害することは、「不当な差別的取扱い」として禁止されます。 「合理的配慮をしないこと」の禁止 障がいのある人から、困っている時に、その人の障がいに合った必要な工夫ややり方を伝えられた場合、負担が重すぎない範囲で対応することを「合理的配慮」といいます。 ※「合理的配慮」の方法は一つではありません。  対応が難しい場合でも、お互いによく話し合い、代わりの方法を見つけていくことが大切です。 ※負担が重すぎないのに、理由もなく対応を拒否することは合理的配慮をしないことになり、差別に当たります。 「芦屋市障がいを理由とする差別のない誰もが        共に暮らせるまち条例」施行までの道 芦屋市障がい者差別解消支援地域 協議会 会長 木下 隆志 氏   (兵庫県立大学大学院 教授)  条例制定に向けて動き始めてから、ほぼ2年を費やし、ようやく条例が施行されます。  「盲導犬を連れているかたの入店はお断り」などの差別はいけません(障がいを理由とする差別)、また、障がいのある人が困っているのであれば配慮しましょう(合理的配慮の提供)、という2つのことを守ることが、条例を制定するきっかけとなった「障害者差別解消法」の根幹となる部分になります。この法律を地域の中で定着させるために、今回芦屋市では条例をつくることにしました。  草案作成時にいろいろ調べたところ、すでに他市で制定されている条例の特徴を大きく分けますと、事業者等が配慮を行うためにかかった経費を補助する制度と、障がいのある人に対する差別があり当事者間では解決しない紛争があった際に、中立的な立場で調停を行う制度のうち、いずれかを盛り込んでいる条例は頑張っている市だとわかりました。逆に言いますと、その2つとも条例に明記しないのであれば、そもそも差別解消法という法律があるため条例をつくる意味はありません。  芦屋市障がい者差別解消支援地域協議会という会議体で条例をつくりたいことを述べ、その後ワーキングチームをつくり、条例の内容について自由闊達(かったつ)なご意見をいただきました。さまざまな立場の方から、本当に真剣な議論がなされたと思います。今回条例を施行するにあたり市内民間事業者を対象とした「合理的配慮提供支援助成事業」が創設されると聞き、この助成事業は真剣な議論の結果であったと考えています。  協議会で出された意見をまとめますと、意識して差別をするという人はいません。しかしながら、差別は「視線」、「態度」、「雰囲気」として常態化していることを確認しました。そして、誰もが「あたりまえ」と思っている日常の中に、実は差別が溶け込んでいます。例えば、昭和の時代における女性のお茶出しに似ています。今のご時世では受け入れられないことになりますが、常態化して見過ごされている場合があるのです。障がいのある人は日常行為や作業中に差別をされていると感じています。これは私のイメージでは「灰色」で「サビついている」風景です。  この条例が潤滑油となり、さまざまな色を付けるためのものになってほしい。はやくいろいろな色が踊りだす風景を見たいと思います。 障がいのある人が周りに伝え、気が付いた人が           自然と助ける。そんな温かい社会へ 今回表紙に登場していただいた能瀬仁美さんと智成君へ、障がいのある人への差別について感じていること、思うこと、伝えたいことを聞きました。  能瀬家の次男として生まれた智成君(智くん)は、知的と身体に障がいがあり、現在、精道中学校に通う3年生。  生後2カ月のころに脳内出血を起こし、8時間におよぶ緊急手術で右脳を全摘出。術後10日目にして奇跡的な生還を果たしました。仁美さんは、退院時に医師にかけられた言葉を今も大切にしています。  「退院してからいろいろと大変なこともあると思いますが、お兄ちゃんと同じように育ててあげてくださいね。」  仁美さんは障がいのある人への差別は本人と他人だけの問題ではなく、親子間でも起こりえるものだと言います。  「もし親子の間で目に見えない差別(心の中での壁のようなもの)があれば、その子はとてもつらい思いをすることになると思います。ですから、私はお兄ちゃんと同じように褒めるときは褒める、注意するときは注意する。障がいがあるから特別ではなく、手助けが必要であったり、人より時間がかかることを理解した上で、精神面ではお兄ちゃんと変わりなく、智成ができることをどんどん増やし、より生きやすくなるために選択肢を増やす手助けをするように努めています。  たまに、障がいのある子の保護者のかたから『この子は障がいが重いから、何もできずにかわいそう』という話を聞くことがあります。私は智成のことをかわいいとは思いますが、かわいそうと思ったことはありません。今の状況を受け入れ、より生きやすくするための努力を一緒にしようと思います。  障がいがある子に対して親が特別視せずに、障がいをその子の個性として受け止め理解し接することで、周りの人に対し、その子の話をするときに自然と差別のない形で伝えられるのだと思います。」  智くん曰く、学校生活は友達もたくさんいて特に困っていることはないとのこと。精道小学校時代からの友達も多く、自分のことを知ってくれているので楽しんで学生生活を送っています。 「今はね、音楽の授業でみんなと歌をうたうことが楽しいんだよね。」 と笑顔で話す智くん。 仁美さんが学校生活での智くんを見ていて思うことは  「芦屋市では、インクルーシブ教育(※)を推進しているので、智成が困っている様子に気づくと手助けをしてくれたり、授業が受けやすいように教室での智成の位置を考えてくれたりする友達がいて、自然と障がいがある子への配慮ができる子供が多いような気がします。意外と大人の皆さんのほうが、障がいのある人を見かけた時に、接し方に戸惑い身構えてしまうのかもしれません。そんな時は、お互いに挨拶をするなど簡単な言葉を交わすことから始めてみてはどうでしょうか?障がいのある人が、手助けをしてほしいことを周りに伝え、その事に気が付いた人が自然と助ける。そんな温かい社会になってほしいです。」 ※【インクルーシブ教育】 障がいの有無にかかわらず共に学べる仕組み。 障がいのある人が排除されることなく、合理的な配慮のもと、地域で教育の機会が提供されること。 日々の生活と人権を 考える集い2020 講演会「あきらめない心」 ■日時 12月5日(土)午後1時30分~3時 (1時開場) ■会場 福祉センター3階多目的ホール ■内容 講演「あきらめない心」・バイオリン演奏 ■対象 市民200人 ■講師 伊藤真波さん(日本初義手の看護師、北京・ロンドンパラリンピック競泳日本代表)  ※手話通訳あり ■申し込み 電話で下記へ 問い合わせ 人権・男女共生課 ☎38-2055 第13回芦屋市障がい児・者作品展 「ぼくら 私たちアーティスト」~コロナに負けずに輝いて~ ■日時 12月2日~8日  午前9時30分~午後5時 ■会場 芦屋市保健福祉センター1階エントランスホール  木口記念会館1階交流ホール 問い合わせ 芦屋市障がい者基幹相談支援センター (保健福祉センター1階)☎31-0739/[ファクス]32-7529