02 特 集 幻になった  芦屋の《ひまわり》 問い合わせ 広報国際交流課 ☎38-2006 11月3日(火・祝)から国立国際美術館(大阪市)で、英国が誇る 世界屈指の美の殿堂「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」が開催されます。 初来日したゴッホの《ひまわり》は61作品の名作の中でも目玉の作品です。 ゴッホの《ひまわり》は、かつての芦屋にも存在していましたが、今では幻の作品。 「芦屋」「ゴッホ幻の作品」「ひまわり」一見関係の無さそうなこの言葉には震災や戦争に翻弄された物語があったのです。 7枚の《ひまわり》 ゴッホの《ひまわり》といえば、芸術に興味がない人でも知っている世界屈指の名画といっても過言ではないでしょう。日本で《ひまわり》と聞いて思い出されるのは、東京の「SOMPO美術館」に常設展示されている《ひまわり》。1987(昭和62)年に安田火災海上保険(現在の損保ジャパン)が巨額(約53億円)を投じて落札したことで話題になりました。 オランダ人の画家フィンセント・ファン・ゴッホ(1853~90年)は、1888~89年の2年間で色合いや本数が異なる花瓶にさされたひまわりを7枚描き、このうち6枚は、東京(SOMPO美術館)・ロンドン(ロンドン・ナショナル・ギャラリー)・アムステルダムの美術館などに所蔵されています。 では、残りの1枚はどこにいったのでしょう。 その所在を知るには、芦屋の大正時代まで遡ります。 大正時代の芦屋 大正時代に芦屋市は、まだ存在しませんでした。芦屋市が誕生したのは1940(昭和15)年11月10日、今月で市制施行80周年を迎えます。それまでの芦屋市域は、精道村と呼ばれていました。 大正時代の芦屋は、明治後半から昭和初期にかけて阪神電鉄・国鉄(現在JR西日本)・阪急電鉄や阪神国道(現在国道2号)などが開通し、大阪・神戸への交通が便利になり、インフラの整備や土地開発も進み住宅地として目覚ましい発展をとげます。 また、文化や芸術面でも「阪神間モダニズム」と呼ばれる洗練された地域文化が開花した時期でした。ヨドコウ迎賓館(旧山邑家住宅)に代表される名建築が数多く建てられました。近代的な生活様式が育まれ、吉原治良(前衛画家)や小出楢重(洋画家)など、芦屋ゆかりの芸術家たちが数々の芸術作品を世に生み出しました。 芦屋へ来た《ひまわり》 この大正時代の芦屋に、大阪で綿織物の会社を設立し財を成した山本顧彌太という優れた実業家がいました。彼は文化や芸術に強い関心を持っており、特に雑誌『白樺』の創刊や美術・文学活動を続けた武者小路実篤に傾倒し、彼の活動を熱心に支援していました。 そして、武者小路実篤らが建設を構想する白樺美術館のために、山本顧彌太は1919(大正8)年に、ゴッホの《ひまわり》を8万フラン(現在の約2億円)で購入しました。 その後、1923(大正12)年に発生した関東大震災による不況のため白樺美術館の設立は頓挫し、行き先を失った《ひまわり》は芦屋の山本邸の応接室に飾られることになります。 結局この《ひまわり》が日本で展示されたのは、1921(大正10)年の東京、1924(大正13)年の大阪で合わせてもわずか14日間だけでした。 戦火に散った《ひまわり》 山本顧彌太の邸宅は打出小槌町にありました。戦争の足音が近づくなか、山本は空襲から《ひまわり》を守るために、安全な場所への避難を模索します。しかし、それが叶うことはなく《ひまわり》は応接室のソファーの上に飾られたまま、その時はやってきました。 1945(昭和20)年8月5日深夜から6日未明、約130機のB29が芦屋の上空から投下した焼夷弾は、非情にも多くの建物を焼きつくし、山本の邸宅も全焼しました。この空襲は、「阪神大空襲」と呼ばれ芦屋を含む阪神地域に壊滅的な被害を与えました。辺り一面が火の海と化し、猛烈な熱風のなか大切に飾られていた《ひまわり》はこの空襲により、はかなくも散ってしまったのです。 終戦を迎える9日前の出来事でした。 焼失する前の芦屋の《ひまわり》を展覧会で鑑賞した吉原治良や小出楢重の感動が、当時の雑誌に残されています。 前衛画家・吉原治良 “向日葵中での最傑作ではなからうかとも思えるのである。僕はこの画の前に立つて体のふるえる程感動した。大げさに云ふようだが僕が今日迄画の方向に深入りをした理由の一つは、この画によって画の深さと高さを教えられたからだ。”      『アシヤ芸術』創刊号より抜粋 洋画家・小出楢重 “恐らく日本に来たゴーグ(ゴッホ)のものの中では最も優秀な又、大作で あります。”      『週刊朝日』大正13年11月23日より抜粋 阪神間モダニズムが開花した時代に、ゴッホの《ひまわり》は確かに 芦屋の地で花を咲かせていました。 この《ひまわり》をもう見ることはできませんが、皆さんの記憶に残る限り、芦屋の《ひまわり》はこれからも咲き続けるに違いありません。 芦屋の《ひまわり》が皆さんの心の中で、       いつまでも咲き続けますように 大塚国際美術館 西洋美術を代表する名画1,000余点を陶板で原寸大に再現する、陶板名画美術館です。開館20周年事業(2018年3月)としてゴッホが描いた「ヒマワリ」全7点を再現し、一堂に展示。 阪神大空襲で焼失した幻の「ヒマワリ」をはじめ世界各地に点在する「ヒマワリ」を一堂に鑑賞することができる展示室は圧巻です。(美術館スタッフの解説) 午前9時30分~午後5時・月曜休館(祝日の場合は翌日) 〒772-0053 徳島県鳴門市鳴門町土佐泊浦福池65-1(鳴門公園内) ☎088-687-3737 ロンドン・ナショナル・ギャラリー展 世界初開催!全61作品日本初公開 ■会期 11月3日(火・祝)~2021年1月31日(日) ■会場 国立国際美術館【大阪・中之島】 国立国際美術館(大阪・中之島) 「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」ペアチケットプレゼント(5組10名様) ■申し込み はがきに、住所・氏名・年齢・職業・電話番号を記入のうえ下記へ。11月30日〈消印有効〉※当選発表は招待券の発送(12月中)をもってかえさせていただきます ■事務局応募宛先 〒541-0046 大阪市中央区平野町4-7-7-8F TMオフィス内「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」招待券(広報あしや)係 ※本展は日時指定制ですが、無料観覧券をお持ちの方は、会期中どの日時でもご入場いただけます。ただし、混雑状況により入場までお待ちいただく場合、もしくは当日の入場可能人数に達したため、入場いただけない場合がございます。無料観覧券をお持ちの方向けの日時指定券は販売いたしません。 開館時間・休館日等詳細 は、公式ホームページへ