02-03 特 集 芦屋消防潜水隊 誕生 令和3年4月1日、芦屋市に潜水隊が誕生しました。 「そこに助けを必要とする命がある限り、人命救助の任務を 最大限にまっとうする」その思いが誕生に込められています。 問い合わせ 消防本部警防課 ☎32-2345 潜水隊とは? 芦屋の潜水隊は、市内の海やキャナルパーク、池などで水難事故が発生した時、普段は消防隊や救助隊として活動する隊員の中から潜水隊員の任命を受けたメンバーが集結し、水難救助を行う、いわば二刀流の隊員達による選出チームです。 潜水隊の発足について 消防署 第2係主査 消防司令補 有馬信之介 これまで市内で水難事故が発生した時、芦屋市消防では水面への救助活動を行ってきました。救助隊員はボートやレスキューボードを活用し、溺れている人の救出に当たっていましたが、水中に沈んでしまった人は、海上保安庁や兵庫県警の潜水隊へ救助を要請するしかありませんでした。要請をしている間にも、時間は刻一刻と過ぎていきます。人命救助の任務を最大限にまっとうするはずの我々が、この状況のままで良いはずがない。その思いが、本市単独でも潜水活動ができる潜水隊の発足に至りました。  本市の潜水隊は潜水専門の部隊ではなく、消防隊と救助隊の中から潜水隊員として任命を受けた隊員で構成しています。限られた隊員数で、現実的で効率的な活動ができる体制を作る必要がありました。潜水活動は常に危険と隣り合わせの特殊な任務です。救助活動やその支援、安全管理などやるべきことは多岐に渡ります。任務分担やマニュアルの作成など、隊員たちが安全迅速に活動できるために、多くの人と相談・協議を重ねた結果、今の活動ができる体制ができあがったと思います。 海浜公園プールでの訓練 潜水隊員として活動するには、潜水士免許を取得したあと1年の養成期間を必要とします。現在、潜水隊員の任命を受けた隊員は11人(養成員3人を含む)。隊員たちは、潜水技術の向上を目指し、訓練を行っています。 海浜公園プールでの訓練は、隊員2人が重さ10キロの錘を交互に渡しながら25メートルを往復するウォームアップや緊急の事態を想定して行う水中での空気ボンベなどの装備の交換・脱着訓練、検索の際の命綱である検索ロープを操る検索訓練、などを行いました。 消防署第1係救助隊長 消防司令補 中島知裕 今回は新人の潜水隊員に対し、潜水隊員に必要な緊急行動と検索救助の技術を習得するための訓練をしました。潜水活動は救助という目的を果たすために、極めて危険を伴う活動であります。 ですから、いつも隊員の安全管理や健康状態には注意して訓練しています。 水難救助時の体制 水難事故が発生した際の救助には、潜水班・水上班・支援班の3つの班が連携し中隊長の指揮のもと救助活動を行います。 1 潜水班  ウエットスーツ・潜水資器材を着装し潜水活動を行う。安全のため2名1組のバディを組み検索・救出を行います。 2 水上班  水面救助に対応できるサーフェイドライスーツを着装し、水上からの検索や要救助者を引き上げるためボートを使用。クレーン免許や船舶免許を保有している救助隊員が主に任務を行います。 3 支援班  常に危険をともなう潜水活動における支援活動(安全管理・情報収集・タラップ設定等)を行う。主に消防隊員が任務にあたります。 南芦屋浜での訓練 前日の雨で海水は濁り、潮の流れも速い状況下で、今回の訓練は誤って海に転落した人を水中で捜し救助する想定で行われました。中隊長の指揮のもと訓練は始まり、水上班が海面へボートの入水作業を手際よく進め、潜水班は水中検索のための装備を装着。ボートが訓練ポイントに到着した後、潜水班の隊員が順に海へと飛び込みます。海中は、50センチ先の物体が見えないほど濁り、要救助者の発見に手こずることが予想されます。検索ポイントにブイを設置して、そのブイを起点に5人の隊員が等間隔で反時計回りに旋回しながら検索する環状検索を行いました。“ブイが3回大きく沈む”と要救助者を発見した合図となります。隊員は要救助者と共に浮上し、慎重に護岸へ搬送し訓練は無事に終了しました。 消防署第1係主査 消防司令補 岡本翔 今回の訓練では、潜水技術の向上や潜水活動の整備を目的とし、特に要救助者を水中から陸上へ引き揚げる際の連携を重視しました。実際の現場では、潜水隊の管理のほか、各班の連携や救急隊・海上保安庁等との調整が不可欠です。それら全てに漏れがないように広い視野をもって冷静に判断するよう心がけています。 昨年(令和2年)芦屋市での水難事故による出動件数は5件。過去10年間でも、釣り人が海に転落したり、遊びで泳いで溺れてしまい波に流されたものなど24件の水難事故が発生しています。 これからの季節、海や川で遊ぶ人たちも増え、出動機会が増えることも予想されます。 芦屋市消防署の隊員たちは“助けを求める人の救助に最善を尽くす”その使命を胸に日夜、出動要請に備え今日も訓練を行っています。