02-03 特 集 認め合って   共に生きる社会へ ~発達障がいを知ろう~ “障がいがあるからできない”そんな先入観にとらわれず、誰もがやりたい事にチャレンジできる社会を作りたい。 その為には、私たちが障がいに関心を持ち理解したうえで、どの様に行動すれば良いか考えることが大切です。 芦屋市は“認め合って共に生きる社会へ”を目指しています。 問い合わせ 障がい福祉課 ☎38-2043 [ファクス]38-2160 4月2日の「世界自閉症啓発デー」にあわせて、市役所に飾られた「龍の言葉」。ASD(自閉スペクトラム症)の佐伯龍之介君が素直な気持ちを表現したこの言葉は、見る人の心を掴む。ASDを理解する人が増えれば、それで悩む人やその周りでサポートする人たちの苦悩も少しは軽くなるかもしれない。今回は、佐伯龍之介君とお母さんの比呂美さんにお話しを伺いました。 市内に住む佐伯龍之介君は芦屋大学4年生の21歳。夢は会社員になること、今はその夢に むかって忙しい毎日をすごしています。彼がASD(自閉スペクトラム症)と診断されたのは3歳の時でした。話かけても反応がなく、抱っこをしている時もそっぽをむいてしまう状態で、まるで自分の殻に閉じこもっているような龍之介君に対し比呂美さんは、どうにかしてコミュニケーションをとりたい、親子関係を築きたいと思っていました。精神的にも肉体的にも苦しい状態のなかで、「すくすく学級(児童の発達を支援する施設)」の先生に龍之介君とのかかわり方についてアドバイスをもらいながら、少しでも龍之介君の興味を引こうと毎日頑張ったそうです。 「“この子はどんなことをすれば喜んでくれるのだろう?”その思いでいつも龍之介を見ていました。ある時おんぶをして走ると龍之介が笑ってくれたんです。うれしくて、何回も部屋の中を走り回りました。“龍之介が笑ってくれることを沢山しよう”この子を育てていくうえで、一番大切にしていることです。」 インタビューでは自分の考えをしっかりと話してくれる龍之介君ですが、小さい頃はなかなか言葉でコミュニケーションを取ろうとしなかったそうです。比呂美さんは、そんな龍之介君に対して言葉を使えば良いことがあると思ってもらおうと考えます。 「龍之介が口にした望みは頑張って叶えるようにしていました。例えば“ハンバーグが食べたい”と食べたい物を言ったときは必ずそれを作るようにしました。言葉にした望みは叶うんだ“言葉は便利だ”と龍之介に思ってほしかったんです。」 龍之介君の成長は、比呂美さんの想像を遥かに超えているようです。 「ASDと診断された時は、この子の成長はこのまま止まってしまうのではないかと思いました。でも岩園幼稚園に入学してから今まで、学校で沢山のお友達といっしょに遊び、勉強することで知識が増え、自分の感情をコントロールする方法や困ったことが起きた場合の解決方法も学び、どんどん成長している龍之介の姿に驚いています。最近では、スケジュール管理が苦手な私に“出かける10分前だけど大丈夫?”と助けてくれます。龍之介を育てることは、この子には何が向いているのか、楽しいと思えることは何かを探しつづける旅だと思っています。」 その思いが昨年の春に実を結びます。龍之介君は令和2年11月に開催された全日本選手権のビームライフル肘射で優勝し、兵庫県のスポーツ優秀選手賞を受賞しました。しかし、龍之介君の興味はライフルだけに留まりません。最近では、お父さんの影響でゴルフにも夢中になっているようです。ゴルフのスイングのように一連の動作をスムーズに動かす必要 のあるスポーツは、ASDのある人たちには苦手なことが多いそうです。そのことを理解しながらコーチングできる人と出会うことで、ゴルフも楽しむことができます。龍之介くんを指導している林裕子コーチは「ゴルフのスイングでも動作を区切って教えるなど、ASDの特性を理解し指導の工夫を心掛けることで、楽しくチャレンジできると思います。」と指導する側の障がいに対する理解の必要性を語っています。 社会にASDのことを理解する輪が広がれば、ASDのある人たちが活動できる場所は広がり、もっと人生の喜びも増えていきます。 「今は、ゴルフをしている時がいちばん楽しいです」とはっきり力強く答えてくれた龍之介君の言葉に“障がいを知る“ことの大切さを感じさせられた瞬間でした。 「発達障がい」とは 発達障がいは、広汎性発達障害(自閉症など)、学習障害、注意欠陥多動性障害など、「脳機能の発達に関係する障がい」です。発達障がいのある人は、コミュニケーションや対人関係を作ることが苦手です。また、その行動や態度が「自分勝手」とか「困った人」などと誤解され、敬遠されることも少なくありません。それが、親のしつけや教育の問題ではなく、脳機能の障がいによるものだと理解すれば、周りの方々の接し方も変わってくるのではないでしょうか。 発達障がいのある人たちが個々の能力を伸ばし、社会の中で自立していくためには、子どものうちからの「気づき」と「適切なサポート」、そして何よりも発達障がいに対する私たち一人ひとりの理解が必要です。発達障がいがあるといっても、障がいの種類や程度によって違いますし、年齢や性格などによっても、一人ひとり違いますので、生活の中で困難なこと、苦手なことも一人ひとり違います。そのため、「一人ひとりの特徴に応じて配慮をしたり、支援したりしていくこと」が重要です。 発達障がいの人に接するときの 配慮について 発達障がいがあるといっても、生活に困難なこと、苦手なことは一人ひとり違います。配慮してほしいポイントをいくつか紹介します。 ▶他の人が簡単にできることでも、うまくできない  →努力している点、うまくいっている点を褒めたうえで、できなかったところは、どのようにやればもっと良くなるかを肯定的・具体的に伝えてみてください。 ▶あいまいな表現が苦手  →言葉で説明するときは、短い文で一つずつ順を追って具体的に説明すると理解しやすくなります。 ▶言葉で言われても理解しづらい  →自閉症など広汎性発達障害の特性をもっている人の多くは、言葉で言われるよりも、目で見て分かる情報の方が理解しやすいと言われていますので、写真や絵を添えて説明すると理解しやすくなります。 ▶人混みや大きな音が苦手  →自閉症の人たちの中には人混みや大きな音、光などの刺激を苦手とする人が多くいます。そのような刺激による不快感を大きくしないよう、安心できる環境を作ってあげましょう。 合理的配慮提供支援助成事業 市内で事業を行う民間事業者が、点字メニューの作成や筆談ボードの設置など、合理的配慮の提供を行う場合、その費用の一部を助成します。 ■助成額  要した費用の2分の1の額を助成します。ただし、令和4年3月  31日までに市へ完了報告を行ったものについては、要した費用の全額 (ただし助成内容の区分ごとに助成上限額あり。)を助成します。 ■問い合わせ 障がい福祉課 ☎38-2043/[ファクス]38-2160 第14回 芦屋市障がい児・者作品展 「With Art  みんなと描くハーモニー」 ■日時 12月3日~9日・午前9時30分~午後5時 ■会場 保健福祉センター1階エントランス  ホール・木口記念会館1階 ■問い合わせ 芦屋市障がい者基幹相談支援  センター☎31-0739/[ファクス]32-7529 「芦屋市障がいを理由とする差別のない誰もが共に暮らせるまち条例」の愛称名が決定しました。 芦屋市では、障がいの有無で分け隔てられることなく、お互いの人格と個性を尊重し、障がいのある人もない人も一緒に生きていく社会を実現するため、令和3年1月に「芦屋市障がいを理由とする差別のない誰もが共に暮らせるまち条例」を施行しました。この条例をより多くの人に知っていただくため、条例の[出演]称名を募集したところ、76人のべ83作品の応募があり、選考の結果、以下の[出演]称に決定しました。多数のご応募ありがとうございました。  愛称名は仲村若菜さんの  「芦屋市共に暮らすまち条例」に決定 合理的配慮提供支援助成事業 活用事業者インタビュー 芦屋市では、令和3年1月に「芦屋市障がいを理由とする差別のない誰もが共に暮らせるまち条例」を施行しました。民間事業者の合理的配慮の提供を推進するため、「合理的配慮提供支援助成事業」を創設しました。 この事業を活用いただいた事業者の取り組みを紹介します。 ※合理的配慮の提供 障がいのある人から、困っているときにその障がいに合った必要な工夫ややり方を伝えられた場合、過重な負担がない範囲で対応すること。 誰もが住みやすく心優しい都市へ 皮膚科芦屋柿本クリニック 院長 川畑香さん  当院は令和元年に浜町から春日町に移転しました。以前は1階でフルフラットの医院でした。現在は2階部分にあり、階段だけで手すりもエレベーターもありませんでした。下肢に障がいがあるかたから、「移転後も通院しやすいように階段に手すりを設けてほしい。」との要望もあり、合理的配慮提供支援事業の助成を受けて設置しました。  設置後は、手すりがないために来院を控えていた患者さんも再び来院してくれました。「階段に手すりがないと、受診を拒絶されているような気持ちになる」と言われ、心のバリアにもなっていた事に気づきました。そして合理的配慮が欠けていたことの見過ごしを反省しました。  この事業は障がいのあるかたへの支援事業ですが、どなたも年齢とともに何かしらの障がいが出る可能性があります。芦屋市が合理的配慮の推進を発信してくれることは、街全体にその意識が浸透し、新しく事業を始めたい人へ影響をおよぼしていくと思います。その輪が広がることで誰もが住みやすく心優しい都市が育まれていく気がします。