02-03 特 集 里親制度を知ってほしい 私たちの周りには、保護者の家出・離婚・病気・児童虐待など、さまざまな事情で保護者と暮らせない子どもが全国で45,000人、兵庫県では約1,500人以上います。そんな子ども達を家庭に迎え入れて育つ機会をプレゼントすることができる里親制度は「子どものための」の大切な制度です。 問い合わせ 子ども家庭総合支援室 ☎31-0643 なんで里親? 子どもは、安全で安心できる家庭環境の中で、特定の大人と安定した[出演]着関係をつくることで、自己肯定感を育み、さまざまな人たちと信頼関係を築いていく力をつけていきます。 また、子どもたちが将来家庭をつくるときに手がかりにするのは、自分が経験してきた身近な「家庭のイメージ」です。子どもの時から安心できる家庭の中で過ごすことにより、将来生きていくための大きな力となります。 いろいろな里親のかたち ある程度の期間子どもの成長を見守りたい 養育里親 原則として0歳~18歳の要保護児童を一定期間養育する里親です 法的にも親子関係を結びたい 養子縁組里親 養子縁組を希望する人が養子縁組の必要な子どもを養育する里親です 仕事が忙しいので休みの日だけでも受け入れたい 季節・週末里親 お正月休みや夏休み、週末などに数日~1週間程度子どもを家に迎える里親です ご飯をいっしょに食べる。ただそれだけ  芦屋で17年里親をしている山下さん 里親になったきっかけは、「週末里親があるからやってみない」という娘からの一言です。そこから今まで、里親を17年続けてこれたのは、子どもの喜ぶ姿が自分の喜びになっているからだと思います。家で一緒にご飯を食べるだけで子どもたちの心は柔らかくなります。そうすると子どもから素直に[出演]情を求めたり、全身で喜びを表現したりと家族になっていく感じがします。その姿をみるのが何よりも嬉しいですね。 初めての里子は活発な幼稚園年長の男の子でした。子どもを3人育てた経験があったので大変ではなかったです。でも養育途中に私が病を患ってしまい、途中でお別れすることになり里親も2年ほど休憩していました。「もっと坊やと一緒にいたかった」その想いからこれからも里親として真剣に子どもたちと向き合っていきたいと思いました。 初めての体験もありました。病気のためヘッドギアをつけた3歳の男の子を受け入れたときのことです。自分で食べることや話すことができず、歩くのも5mがやっとのことでした。スプーン大さじ1杯をがんばって食べ、2杯目を食べると戻してしまったんです。その子の食べられる量を知らなかったことに反省し、これからは少しずつ増やしていこうと思いました。”子どもの状態を見ながらこちらが理解をして合わせていかなければ“と気づかせてくれました。 印象に残っていることは、1人の少女との出[申し込み]いです。家出をしていた高校1年生の女の子が家に来てくれた時、長い間お風呂に入っていなかったのでしょう、すごい匂いがしていました。その子がお風呂に入っている間に「衣服や上着も洗っていい?」と聞いて洗いました。「明日は起こさないから寝たいだけ寝ていいよ」と言うとよっぽど疲れていたのか、お昼近くまで寝ていました。「ご飯にする?もう少し寝る?」と聞くと「ご飯を食べる!」と飛び起きてきました。一時預かりだったため1泊で帰ることになり「短い間だったけど、どうだった?」 と聞くと「すごい安心した」と言ってくれました。その言葉に”これから一緒にご飯を食べて生活するだけで“この子は家出をしない普通の子どもになるのではないかと里親の必要性を感じました。 私は一時預かり・緊急預かりも受け入れているので、こども家庭センターや警察署から連絡があった1時間後には子どもを受け入れられるよう準備をしています。このインタビューを受ける前にも部屋や布団、そしてご飯も作れるように準備をしてきました。 芦屋はまだ里親さんが少ないので、まずは知ってほしいです。里親にも色々な種類があります。月1回の週末里親、夏休み・冬休み期間中の季節里親。もちろん養子縁組里親や養育里親もありますから自分の生活スタイルから選択することができます。なにも難しいことはないんです。“ご飯をもう一つ余分に作って一緒に食べる”というだけなんです。みんな子どもたちは偏食なしでたっぷり食べてくれるから作りがいもありますよ。里親って楽しいことばかりです。 里親になるには 里親になるには特別な資格は必要ありません。ですが、子どもが安全で安心できる家庭環境で暮らし、そして社会へ巣立っていくために、研修や面接などを受けてもらう必要があります。 相談 西宮こども家庭センターに相談か連絡をしてください。制度について詳しくご説明します。 研修・家庭訪問 里親制度や子どもの権利擁護を学び、乳児院などで実習も行います。こども家庭センターの職員等が家庭訪問を行います。 登録 県の審査を経て里親登録となります。 子どもとの出会い こども家庭センターから紹介があり、子どもとの面会・外出・外泊等の交流を経て、正式に里親委託されます。 里親委託 里親Q&A Q 里親に年齢制限はありますか? A 養育里親については、具体的な年齢制限は設けていませんが、子どもの委託見込み期間と里親の年齢を踏まえて、子どもの委託が検討されます。 Q 共働きでも大丈夫? A 子どもの養育に支障のない範囲での共働きは問題ありません。必要に応じて保育所や放課後児童クラブなども利用することができます。 Q 実子がいても里親になれる? A なれます。実の子どもに里親になることを伝え、理解を得たうえで、新しい家族を迎えるのが理想です。実の子どもの年齢や性別を考慮して、委託する子どもを決めることもあります。 Q 特別な資格が必要ですか? A 研修を受け、子どもに適した住環境があるなどの要件を満たしていれば、特別な資格は必要ありません。里親に望まれるのは子どもへの豊かな愛情です。 里親になりたい人のための相談会 芦屋市で子どもを家庭に迎え入れて育てたい人はどなたでも、ご参加ください。 ■日時 2月22日(火)午前10時~午後4時  【説明会】午前10時~11時10分/午後1時30分~2時40分  【個別相談〈予約可〉】午前11時10分~午後0時30分/午後2時40分~4時 ■会場 芦屋市役所東館3階会議室3 ■申し込み&問い合わせ 芦屋市子ども家庭相談支援室☎31-0643/[ファクス]31-0647/[メール]kosodate@city.ashiya.lg.jp 説明会では、施設で暮らす子どもたちの話や里親の体験談&インタビューもあります 里親に関する問い合わせ【西宮こども家庭センター】 ☎0798-71-4670/[ファクス]0798-74-2538 里親に関する情報は右記2次元コードへ 社会的養育の中心的存在の「里親」 原田旬哉氏(園田学園女子大学人間教育学部准教授) さまざまな理由で家族と一緒に暮らすことができない子どもたちの受け皿として社会的養育があり、今まで主に児童養護施設が担ってきました。児童養護施設はかつて「孤児院」として、戦後は「戦争孤児」や「浮浪児」を受け入れてきました。その後、日本社会の変化とともに家族の状況も変化し、児童虐待等の不適切な養育環境下にある子どもたちが暮らす施設となっています。しかし、現代は多様化の時代となり、社会的養育を施設だけが受け皿となっているのは不十分な状況です。 今、家庭に代わる代替養育の環境は「恒久的な家庭を実現する」ということで、里親や特別養子縁組といった制度を主流にしようとの流れがあります。 実際に、私が19年間児童養護施設職員を経験する中で「家族と暮らすことが将来的に期待できない子どもは施設ではなく、里親や特別養子縁組のほうがいいのではないか」と感じることは多々ありました。 これからの社会的養育のあり方として、子どもや家族のニーズに合致した環境を用意することが必要になっています。その基本的な考えとしては「家庭に近い環境」であり、その中心的役割を担うのは里親です。施設は新たな機能として再編し、体系的な社会的養育システムを形成することが必要です。 里親家庭で大切にしていただきたいことは、衣・食・住といった「あたりまえ」の暮らしを里子(里親委託された子ども)と一緒に、笑顔の絶えない中で成長できる環境を創っていただくことだと思います。 里親制度を推進していくには、市民のみなさまに社会的養育に関心を持っていただき、一人でも多くの方に里親になっていただくことができれば、その数だけ子どもの笑顔が増えることになります。社会的養育を必要とする子どもたちが安心して暮らせるような居場所を地域の中に創っていただければ幸いです。