02-03 特集 音の無い世界で~ともに暮らす芦屋~ 聞こえる人も聞こえない人もそれぞれの生活を楽しめるまちへ 芦屋ろうあ協会の皆さん(金井さん・佐藤さん・浦山さん・笠井さん)に、聴覚障がいのある人の暮らしや、生活の中で困ったこと、どのような支援・サポートが助かったのかを伺いました。 問い合わせ 障がい福祉課☎38-2043/[ファクス]38-2160 ご自身の聴覚障がいについて教えてください 【佐藤】 私が耳が聞こえないのは病気が原因で、1歳半~2歳くらいのときに高熱が原因で聞こえなくなりました。親も当初は聞こえない人が行く学校を知らなかったので、9歳でろう学校に入りました。 【金井】 私は生まれつきらしいです。母の話だと、2歳になる少し前、言葉の遅れや名前を呼んでも反応がないので、病院で診てもらった結果、聞こえないことがわかりました。サイレンや飛行機の音も聞こえません。 【浦山】 私も生まれつきのろうです。赤ちゃんの時におとなしかった私を、母が何か不思議だと思って病院に連れて行ったそうです。 【笠井】 私は、0歳のときから聞こえませんが、親も気づかなかったようです。2歳ぐらいから声は出していたようですが、それでも聞こえなかったみたいで、病院へ連れて行って、ろうだということがわかり、母はとってもショックを受けたようです。 皆さんの仕事について教えてください 【佐藤】 知り合いに紹介されて、仕立屋で働きました。聞こえない人は何もできないという雰囲気だったので、何かちょっとできると「わぁできる」みたいに言われることが悔しかったです。でも、仕事を続けて縫い物が上手になると、仕事をたくさんもらえるようになりました。 【金井】 人事担当の方が手話ができるとうい理由で今の会社に入社を決めました。特許や意匠など知的財産に関する権利を預かっている職場でパソコンを使って費用や日程管理などの仕事をしています。電話はできませんが、今は一人一台パソコンを与えられているのでメールやチャット中心に仕事を進めています。また音声認識アプリを使うことでコミュニケーションもスムーズになり、入社した頃に比べればずいぶん変わったと思います。 【浦山】 美容院に7年半勤め、そのあと友達が会社を勧めてくれて、そこに長く勤めることができました。みんなとても優しくて、よかったと思います。今はやっていませんが、手話を教える仕事もしていました。 【笠井】 薬剤師として8年働きました。こちらの手話カフェをしながら薬剤師をしていたけど、両立が難しくて薬剤師を2年前にやめました。薬剤師の仕事では、患者さんに状況を聞くとき、元気な人なら筆談をしてくれますが、体調の悪い人からは筆談を断られ、裏の仕事に回るなど、8年間コミュニケーションに苦労しました。 【佐藤】 昔は聞こえないだけで馬鹿にされていたけれど、今はいろいろと活躍の場がありますね。 【金井】 先輩方の苦労があったからこそ社会が良い方向に変わっていったんだと感謝しています。ありがとうございます。 ろうあ協会としてどのような活動をしているのか教えてください 【金井】 毎年、市が実施している手話奉仕員養成講座の講師を年間20回くらい担当しています。他にも小・中学校から、毎年福祉学習の講師依頼があります。今はほとんど私が行っていますが、機会があれば、笠井さんにも行ってほしいなあと思っています。 【笠井】 そうですね。ただここ(手話カフェ)があるのでね。代わりに営業してください。 【一同】(笑) 【金井】 あとは今、市内の高校生・リードあしや・障がい福祉課などと協働で、手話を広めるためのパンフレットを制作中です。 手話が広まるためにはどのようなことが必要だと思いますか 【金井】 小学校を回ってもっと手話を広めたいです。制作中の手話パンフレットも、小学校4年生に理解してもらえる内容にみんなで考えています。 【笠井】 聞こえていた人も、年齢とともに聞こえにくくなって、コミュニケーションが取れなくなったという悩みもたくさん聞いています。若いときから英語と同じように、言語として手話に触れていたら、将来いろいろな場面で効果を発揮できて、世界が広がるんじゃないかなと思います。 【金井】 阪神・淡路大震災の年に手話を扱ったドラマが続いて放映されました。それまではまちや電車の中などで手話を使っていると冷たい視線を感じることが多かったのですが、ドラマ放映後は視線が柔らかくなっていったのを覚えています。最近でも手話を扱ったドラマや映画が放映され、さらに多くの人に理解が広まっているのではないかと思っています。 普段の生活で、支援やサポートを受けて助かった経験があれば教えてください 【金井】 お店に行ったときに「ありがとう」とか、簡単な手話をやってくれる人が増えたことが嬉しいです。一人で行動していると、外見からでは聞こえないことがわかりにくいのですが、友達と手話で話をしてると、店員さん、「ちょっと手話ができますよ」と話しかけてくれた時は嬉しかったです。「手話ができます」バッジやお店に「手話ができる人がいます」というマークがあったら、質問しやすくていいなと思います。 【佐藤】 街中でも、だんだんと手話をする人が増えているのを実感します。「今勉強中です」と言ってくれると嬉しいですね。 【浦山】 一方で、地震や火事のときの連絡方法が必要だと思いますが、今までそういう場面で助けてもらった経験はないです。自分が聞こえない中で、助けてくれる人がいないということに不安を感じます。 【金井】 何かあったときに自分の命を守るためにも、少しずつでも地域とつながれるネットワークを作っていくきっかけとして、ろうあ協会をはじめ、いろんな場所に出かけて行ってもらえたらなと思います。 最後に、読者へメッセージがあればお願いします 【金井】 私たちは聞こえないので、聞こえる人から見ると「困ってる」「大変」と見られるかもしれませんが、実際私たちはそんなに大変だとは思っていないです。最近、病院で家族について話をした時、私には子どもが2人いて、「お子さん、耳は?」と聞かれたんですよ。「2人は聞こえます」って答えたら「よかったね」と拍手をされました。聞こえる人からすると聞こえるほうがいいのかもしれないですが、聞こえない人からしたら自分を否定されているように受け止めてしまいます。私は「聞こえる人は大変だな…。聞こえなくて良かった」と思うこともあります。 聞こえても聞こえなくも、それぞれ自分の生活を楽しめることが一番大事だと思っています。 今回のインタビュー場所は… 芦屋川手話cafe & BAR〈Knot〉 西山町1-2 日・月:午後1時~6時30分 木:午後1時~8時30分 金・土:午後6時~11時 聞こえる人、手話を知らない人もぜひご来店ください インタビューを終えて 今回のインタビューでは、芦屋市の設置手話通訳者・登録手話通訳者の皆さんが通訳してくれました。最初に手話で自己紹介をすると会話が生まれ、ぐっと距離が近づいた気がしました。これを読んだ方も、手話を覚えておくと「知っててよかった」と思う日がくるかもしれません。 聞こえに関する相談はこちら 聴覚障がいのある人やご家族、何か困りごとがあれば、ぜひ私たちにご相談ください。少しでも暮らしやすくなるよう、共に考えていきませんか? 連絡先:ashiyadeaf@gmail.com (芦屋ろうあ協会) みんなにやさしいお店登録+合理的配慮の充実で、障がいのある人にやさしいお店にしませんか 「芦屋市みんなにやさしいお店」に登録しませんか 障がいのある人が安心して利用することができるお店を増やすために、「芦屋市みんなにやさしいお店登録事業」を実施しています。「芦屋市みんなにやさしいお店」とは、障がいのある人が来店した時に、できる限り配慮することを心がけ、障がいのある人の社会参加を応援するお店のことです。登録していただくと、登録店舗の情報を芦屋市のホームページやInstagramなどに掲載し、「芦屋市みんなにやさしいお店」として周知します。 手話カフェ〈Knot〉様にもご登録いただきました! ▶合理的配慮の提供とは? 障がいのある人から、その障がいを理由に何らかの対応をお願いされた場合、負担が重すぎない範囲で対応することを「合理的配慮の提供」といいます。令和6年4月より合理的配慮の提供が民間事業者にも義務化されています。 ▶合理的配慮の提供への費用を助成します お店などが障がいのある人に合理的配慮の提供をするための費用の一部を助成しています。例えば、お店に手すりを付けたり、コミュニケーションツール(例:点字メニュー・音声チラシなど)を購入したりする費用が対象になります。 新たに、「講演会などでの手話通訳者・要約筆記の派遣」「障がい理解などの研修会」が助成メニューに加わりました。 障がい児・者作品展 「感じるものを形にしたら、あなたもわたしもアーティスト」 ■日時 12月4日~10日午前9時30分~午後5時 ■会場 保健福祉センター1階エントランスホールおよび木口 記念会館(月曜休館) ※12月5日(木)午前10時~午後4時まで木口記念会館1階多目的 ホールにて授産品(雑貨やハンドメイド商品など)の販売会を開催 ■問い合わせ 芦屋市障がい者基幹相談支援センター ☎31-0739/[ファクス]32-7529 芦屋市自立支援協議会実務者会から アンケート回答のお願い 自立支援協議会実務者会では、「みんなにやさしい芦屋」を目指して、芦屋市を障がいのある人にもない人にもやさしいまちにするために日々協議を重ねています。これからの取り組みに役立てるため、ぜひ「みんなにやさしい芦屋」に関するアンケートへの回答にご協力ください。回答にかかる時間は5分程度です。 ■回答期間 12月27日(金)まで 知っていますか 緊急・災害時要援護者台帳 「緊急・災害時要援護者台帳」とは、ひとり暮らしの高齢者や障がいのある人などが、緊急・災害時に避難が遅れる、安否がわからないといった状況にならないよう、氏名、住所、緊急時の連絡先などの情報をあらかじめ登録いただく制度です。登録内容は、民生委員・児童委員、芦屋市社会福祉協議会などの関係機関に伝え、平常時から地域との関わり合いを持ち、緊急・災害時に役立てることを目的としています。 まるっと説明会を開催します 芦屋の障がい福祉が「まるっと」わかるイベント ■日時 令和7年2月15日(土)午前10時~午後4時 ■会場 芦屋市役所東館3階 ■内容 【講演会】シンガーソングライター「TAKERU」さんの母からメッセージ〈要予約〉・高校生による障がいのある人と災害についての発表〈要予約〉事業所パネル展示・手作り商品の販売・ワークショップ・相談コーナーなど ■申し込み 講演会のみ12月20日~令和7年2月9日にホームページから ■問い合わせ まるっと説明会実行委員会事務局(芦屋市障がい者基幹相談支援センター)☎31-0739/[ファクス]32-7529