02-03 特集 更正保護が紡ぐ希望 ~犯罪や非行を防止し、立ち直りを支える地域のチカラ~ 問い合わせ 地域福祉課☎38-2153 7月は「社会を明るくする運動」の強調月間および再犯防止啓発月間です。犯罪防止や罪を犯したり非行をした人たちの更生を目指し、安全で安心な地域社会を築くための全国的な取り組みです。 今回の特集では、更生を支える関係団体の活動と地域での更生保護の重要性について、お二人にインタビューをさせていただきました。 芦屋市保護司会 会長 松枝 泰生さん 芦屋地区更生 保護女性会 会長 重村 信子さん ─それぞれの団体の紹介をお願いします 松枝:保護司は罪や非行を犯した人々の更生を支援し、再犯防止に取り組んでいます。具体的には、刑務所や少年院から仮出所・仮退院した人たちを含む保護観察処分を受けた人と会い、話を聞きながら助言や指導を行って、必要な場合は関係機関との連携を図り立ち直りを支えます。また、本人が出所後に帰る環境を確認し、立ち直りやすい状況を整えるための環境調整も行っています。このような活動を通じて、保護司は再犯防止に貢献しており、保護司会としても地域での再犯防止や防犯に関する啓発活動を行います。代表的な啓発活動として「社会を明るくする運動」(※右ページ下参照)があります。 重村:更生保護女性会は、罪や非行を犯した人々の立ち直りを支援する女性ボランティア団体です。保護観察になった人々が立ち直るために、県内の更生保護施設で「おふくろの味」を味わってもらえるよう、ディナーサービスやクリスマス会など、少しでも子どもたちに寄り添える支援活動を行っています。 ─活動をしようと思ったきっかけは? 松枝:保護司になったきっかけとしては、近所の保護司からのお誘いや保護司をしていた家族の影響が多くありました。他には、地域に根付いた職業の方やボランティア活動をしている方も多いです。今は、保護司の活動を広く知ってもらうために活動をアピールし、地域での理解と協力を求めています。 重村:夫や夫の父が保護司だったので更生保護女性会の活動内容は知っていましたし、地域のためになればと思い参加しました。現在は高齢の方が多いですが、ぜひ若い方にも参加してほしいですね。 -活動する上での苦労などは? 松枝:保護司は、法律で規定されていて給料はありませんが、法務省の保護観察所より交通費などの支給はあり、いわゆる非常勤の国家公務員という立場で支援体制もしっかりしています。その点で更生保護女性会は完全なボランティアなので大変だと思います。 重村:更生保護女性会はボランティア活動のため資金調達が必要で、バザーなどを通じて資金を集めています。活動は目に見えないサポートが多く、直接的な成果を感じにくいですが、手紙などで感謝の言葉を受け取ることが励みになっています。 松枝:見返りがあるわけではないので、なんとか立ち直ってもらいたいという思いだけです。しかし犯罪が多様化していますので、対応が難しくなってきています。 重村:ネット社会になって、すぐに犯罪に結びついているように思います。子どもたちはネットを通じて、ちょっとしたアルバイト感覚で犯罪に手を染めるケースが多くなっています。そこをどう食い止めたらいいのかなと。犯罪を起こした子どもたちは、後でものすごく後悔しているんです。私たちでも何とかできないかなと思うのですが。 -更生保護のどういったところが大事だと思いますか? 松枝:刑法犯の検挙人員は、全体では下がっているのに、再犯者率が横ばいもしくは増えてきています。この傾向からも同じことを繰り返さないようにするための取り組みが更生保護の大きな柱です。悪いことをした人に対しては、「悪いことをしたんだから少々苦労しても仕方がない」と多くの人が考えるかもしれません。しかし育ってきた家庭環境や生活の中で、生きづらさを抱えて、非行や犯罪に走ってしまったケースは多いのです。だからこそ、誰かがそこで手を差し伸べることができれば最初の犯罪に至らなかった可能性があります。そういう方たちを、本来の素直な自分自身に戻すことができるかかどうかが、更生保護の一番大事なところです。難しいことですけれどね。 -本当に難しい活動ですね。その中で伝えたいことはありますか? 松枝:相談できる家族がいない人が多いです。また、一緒に犯罪に手を染めた集団と関係を切ってもらうので、友人関係でも孤立することがあります。そこで保護司がずっとサポートできれば良いのですが、保護観察期間の終了後は保護司から接することはできません。そこにもどかしさもあります。数年前から更生保護サポートセンターを市民センター別館に設置しています。保護観察を終えても相談相手がいなくて困っている場合は、そこを訪ねて来てもらえれば嬉しいですね。 -最後に地域の皆さんに伝えたいことは? 重村:この特集などを通じて地域の皆さんに更生保護の取り組みを理解していただき、身近なところで困っている青少年がいたら、気にかけていただければと思います。そして私たちの活動に参加したい方は、ぜひ「社会を明るくする運動」にご参加ください。これらの活動を通じて、罪を犯した人々の立ち直りを支援し、地域社会全体で再犯防止に取り組んでいきませんか。 保護司の活動をもっと知りたい方は… 芦屋市保護司会 業平町8-5市民センター別館 (芦屋市更生保護サポートセンター内) 痛ましい事件を受けて 5月の滋賀県大津市における事件で被害者となられた保護司の方へ哀悼の意を捧げます。 悲しい事件を繰り返さないためにも、 立ち直りを支え、相手に寄り添い人と人との繋がりを育んでいく更生保護活動の大切さをより一層深く感じております。 芦屋市保護司会 会長 松枝泰生 更生保護とは 犯罪や非行をした人が、罪を償い、社会の一員として立ち直るためには、本人の強い意志だけではなく、地域社会の理解と協力を得て、社会で受け入れられることが必要です。 更生保護とは、罪を償い、再出発しようとする人たちの立ち直りを導き、助け、再び犯罪や非行に陥ることを防ぐ仕組みであり、取り組みです。 更生保護の始まり 明治時代、静岡監獄の囚人であった吾作(仮名)は副典獄(今でいえば刑務所の副所長)である川村矯一郎の訓戒により、更生を誓って監獄を去りました。しかし出所後、家族も頼る人も失った吾作は村内の親戚や警察署からも助けを拒まれ、川村への書置きを残して、池に身を投じ自らの命を断ってしまったのです。 心を痛めた川村は実業家の金原明善に相談しました。金原は、「改心して監獄を出た者を社会の中でしっかりと保護する方法を考えなくてはいけない。欧米に出獄人を保護する団体があるが、それを静岡県にも作ろう」と提案し、地域の協力を得て明治21年に釈放者を保護する施設を設立しました。 これが更生保護の始まりと言われています。 保護司になってみて 保護司Aさんの体験談 私が保護司になって5年になります。知人にすすめられ、覚悟が必要でしたが「未熟な私でもお役に立てるなら」と、自分への挑戦のつもりでお誘いを受けました。保護司となり、対象者との面接を通じて、困ったり、一緒に悩み、共に喜び合いながら、育っていく姿を見ることは保護司としての喜びであり、醍醐味だと感じています。再犯を減らすためには、孤独や生きづらさを軽くするために、自分の気持ちを打ち明けられる人の存在が必要だと感じます。 本当に悪い子はいないというのが私の思いです。どこかでたくましく生きて、周りから愛される存在になっている事を強く願い、誰一人おきざりにしない社会となるように、微力ながら保護司としての活動を続けていきたいと思います。 私たちにできること 社会を明るくする運動 毎年7月を強調月間として、すべての国民が、犯罪や非行をした人たちの更生について理解を深め、地域の人々がそれぞれの立場において力を合わせ、犯罪や非行のない安全で安心な明るい地域社会を築くための全国的な運動です。 芦屋市では保護司会、更生保護女性会をはじめ、青少年育成愛護委員会や防犯協会などで街頭啓発やケース研究などを行い、支援の方法を考えたり、情報交換などをしたりしています。 社会を明るくする運動 シンポジウム ~その子らしく、すくすくと育つために~ ■日時 7月24日(水)  午後1時30分~3時(開場:1時~) ■会場 保健福祉センター3階  多目的ホール ■内容 【現状説明】芦屋市長「子どもに関する取り組み」・芦屋市教育委員会「芦屋での学校の現状」・芦屋警察「青少年犯罪・非行少年の実態」・神戸保護観察所「保護観察の現状」  【パネルディスカッション】(ファシリテーター:芦屋市長 パネリスト:教育委員会・芦屋警察・保護観察所・保護司・青少 年育成愛護委員) ■申し込み 直接会場へ ■問い合わせ 地域福祉課☎38-2153/[ファクス]38-2160