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更新日:2026年7月17日
みどり豊かな美しい本市の景観は、自然と暮らしが織りなす「けしき」として、先人たちから受け継がれてきました。その‘’歴史‘’を大切にし、‘’未来’’へつなぐため、’’いま’’の取り組みを紹介します。
芦屋市都市景観賞を受賞した芦屋リストランテベリーニの小野さんと、芦屋の景観行政に長く携わってこられた、奈良文化財研究所 文化遺産部 景観研究室 客員研究員の小浦久子先生と、芦屋のまちづくりについて、令和7年4月30日に対談をおこないました。その内容を紹介いたします。

市長:小野さんが芦屋に住まわれたきっかけはなんですか。
小野さん:35年前に就職をきっかけに芦屋に来ました。もともと出身は岡山の倉敷で、芦屋は豪邸が多くてお金持ちが多い印象でした。そういうところで働いてみたいという憧れが第一でした。暮らしてみて、まず一番に住みやすくて自然が多いので、よく山を歩いたりしています。
市長:そうですよね。自然が多く魅力がたくさんありますよね。小浦さんはどうですか。
小浦さん:私はもともと西宮に住んでいて、阪神間に住むということが基本的にありました。選択肢の一つが「芦屋」で芦屋に住むことになったのですが、同じ阪神間でも2号線や山手幹線を走っていて、芦屋に入るとふっと空気が変わるんです。何かそこがすごく好きだったし、緑の量が他の地域と比べてすごく多いことが大きな魅力だと思っています。


市長:私もアメリカから帰ってきてから本格的に芦屋に住み始めましたが、一度外の環境を知って芦屋に来ると、より一層芦屋のまちの良さを知ることができると思います。いいなと思う要素はいろいろとありますが、ゆったりとした時間がながれていて、空が広くて、緑が多く、美しい景観が残っている。そういったものが相まって落ち着いた雰囲気を感じられるところがいいと思っています。
小浦さん:空が広く感じるのは六甲山の山並みが大きく関係しています。山並みがあって、そこに空が流れているという景観が広がりを感じられる要素になっているのではないかと思います。芦屋は生活道路に緑があり、街路樹が植わっていて、緑ゆたかな景観が形成されていますが、山の緑が背景にあることが芦屋を緑ゆたかなまちだと感じられる重要な要素だと言えます。

髙嶋市長:山が大事なのですね。
小野さん:私は山の方に住んでいますが、緑を見ながら家でゆったりとした時間を過ごすことが好きです。また、妻と二人で芦屋の浜の方の公園に遊びに来ている人を持ってきた椅子に腰かけて眺めたり、ゆったりとしていて気持ちよく過ごせる場所だと感じます。
小浦さん:そういう場所があるということはすごくいいですよね。
髙島市長:山があって、川があって、海があって、これだけぎゅっと近いところに全部が集まっている地域はなかなかないですよね。
小浦さん:そういったことを生活の中で感じられるということを大事にしていきたいですよね。私はコロナのときに芦屋のまちを散歩していました。そんな中、今まで知らなかった建物を発見できたり、別に何をしなくてもただ歩くだけで楽しめるまちが素晴らしいと改めて感じました。昔に建てられた共同住宅の方が意外としっかりとデザインされていて、ゆったりとつくられていたり。特にベリーニさんのある芦屋川沿いもゆったりとつくられた洋館や大きな邸宅が多くあったのですが、今では建て替えが進んで随分と少なくなってしまいました。

(芦屋市月若町、ベリーニ)
髙嶋市長:それらの建物がゆったり建てられていたのは、当時厳しい規制があったからというわけではなく、そこに住む方が積極的に芦屋のまちなみに合うようゆったりと設計されていたのだと思いますが、こういったまちなみを今後どう守っていくのがいいと考えますか。
小浦さん:難しいですよね。戦前期の阪神間モダニズム文化や伝統的な暮らし、ゆったりとした暮らし方が受け継がれているところに、転勤などで常に動いている流動層の人々など、元々芦屋で生まれ育ってきた人以外のいろんな人たちが住み始めるようになったので、規制というルールが必要になってきたのだと考えます。芦屋独自の豊かさは芦屋という場所における暮らし方の文化がつくってきたのだと思います。
髙嶋市長:そういった暮らし方の文化というのは、適度な距離感を持ちつつ緩くつながっているようなご近所づきあいの中で自然と伝えられてきたのでしょうね。
小浦さん:震災前に住んでいた方はそうだと思います。震災の後、共同住宅が増えて、7年で人口の4割以上が入れ替わりました。なかなか暮らし方の文化を伝えるということが難しくなってきていると思います。
髙嶋市長:自然と受け継がれてきた暮らし方の文化、どのように今後も受け継いでいくべきなのか、市としても考えなければならないですね。
小浦さん:小野さんのお店に来られるお客様の中でも何十年と通われている方もいると思いますが、変化はあったりしますか。
小野さん:もちろん何十年と通っていただいている方はいらっしゃいます。毎週来られる方も、2、3日ごとに来られる方もいます。なので、その人たちをどう飽きさせないようにするか試行錯誤しながらやってきています。イタリアンだけでなく、オムライスやカレーなども作ったりすることもありますよ。
小浦さん:お客様の方から要望があるということですよね。そんな風にお願いを言える関係はすごくいいですよね。
小野さん:あとは、落ち着ける店にもしたいと考えていて、お家で過ごしているような感じでいてもらえるように昔から心得ています。
小浦さん:私にも昔はお願いを聞いてもらえるような行きつけのお店があったのですが、シェフがだんだん年を取られてお店を閉めてしまって、行き場を失ってしまいました。そういったお店がだんだんなくなってきたように感じます。
小野さん:そうですね。融通が利くようなお店が昔はたくさんあったのですが、最近は減ってきたような気がします。私は、お客さんに育ててもらったようなもので、お客さんがいろんなレストランや和食屋さんにも連れて行って勉強させてくださいました。そういった昔ならではの関係性が今ではあまりなくなってきていると思います。
小浦さん:確かに、人と人の関係は少しずつ変わってきている気がしますね。
髙嶋市長:市民と市との関係性はどうでしょうか。芦屋の場合は、芦屋市屋外広告物条例が施行され、市民の皆さんに御協力いただけた事例が多く、主体的にまちを良くしようと考えて行動してくださっている市民が多いと感じました。
小浦さん:景観は市民と一緒に育つものだと思いますが、共同住宅などの事業となると経済的な収益しか考えられなくなってしまって、そういった関係性が生まれにくいです。先ほどの、お店とお客様の関係のように、おいしいよとかを言えるような環境がお隣さんとの関係にも置き換えられて、暮らしのルールのようなこと、例えばあれをしたらダメなんじゃないとか言える関係が減ってきているのかなという気はします。皆さん自分のお家を自分のいいようにしたいだけだとは思うのですが、それが周りにも影響するというところまで考えられていないのではないでしょうか。共同住宅ができると住環境が悪くなるといった問題が最初は多くありましたが、実は、今、戸建てより共同住宅の方が住みよいまちづくり条例や景観条例による緑を設ける基準があるので、きちんと緑が設けられています。緑の基準がない地域では、戸建ての住宅はお庭がなく駐車場がメインの住宅が増えてしまっています。お屋敷の後を戸建ての住宅にするより、お屋敷の緑を残しつつ共同住宅を建ててもらった方がよっぽど緑豊かなまちなみが維持されるのです。けれどもお隣さんとの良好な関係性をつくるのはなかなか難しい世の中になってしまっているという感じですね。
小野さんのレストランも常連のお客様だけでなく、新しいお客様も来られると思いますが、どうですか。関係性を上手く築ける方法があったりするでしょうか。
小野さん:私のレストランへ新たに訪れるお客様はやはりまず、この場所に魅力を感じていただく方が多いと思います。前オーナーもこの場所を大事にしていて、震災で建物が傾いた時も相当なお金をかけて直しました。現オーナーも建物などの修繕費だけでも膨大になってしまうけれども、今の場所、建物を維持するために費用を捻出してくれています。私自身もできるだけ変えたくないと考えています。
