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更新日:2022年1月4日
芦屋市市民参画・協働アドバイザー山崎亮氏
〔プロフィール〕
芦屋市市民参画・協働アドバイザー。studio-L代表。コミュニティデザイナー。社会福祉士。
大阪府立大学大学院及び東京大学大学院修了。博士(工学)。建築・ランドスケープ設計事務所を経て、2005年にstudio-Lを設立。
地域の課題を地域に住む人たちが解決するためのコミュニティデザインに携わる。
これまでの消費社会の中では、働いて得たお金でモノやサービスを買い、それが増えるほど人生が豊かであるという構図が成り立ってきました。この構図を逆算すると、モノやサービスをたくさん手に入れるには、お金を稼ぐ必要があり、そのためにたくさん働かないといけない。でもたくさん働いていたら、豊かな人生を謳歌する時間がなくなるということに戻ってくるわけです。
政府や企業は、国民が勤勉に働くことで競争力が高まり、GDPが増えることを良しとしてきました。しかしその影響により、ずっと働き続けて定年退職した後に時間をもてあましてしまう人が増えることや、ファストファッションのように大量の売れ残り商品の廃棄による自然環境への負荷、途上国における低賃金での労働力の搾取の問題など、エコに詳しくない人でも消費の裏側にある問題点に気づき始めています。さらに、この構図が格差を生み出し、福祉が必要な社会を生み出し続けていることが分かってきています。
一方で「豊かさ」の概念を変え、モノやサービスをたくさん得ること以外に価値観をシフトすれば、考え方が変わります。ミックスジュースを例にすると、「とてもおいしい高級なミックスジュースを買えるお金があることが豊かさである」と感じるのもいいけれど、「みんなでフルーツを持ち寄ってミックスジュースを作って飲むことが楽しいよね」ということが豊かさだとすれば、どうなると思いますか?
高級メロンを買って持ってくるより、庭で採れた桃を10個くらい持ってくることの方が「すごい!」ってなるかもしれません。また、作っているプロセスでも「ミックスジュースなのに、なんでスイカ持ってきているの?」「うちは、スイカを入れてるよ。」とか、そんな楽しいやりとりがあったりしてね。(笑)自分たちが作って飲むことが豊かさとなるとき、価値観が変わり、高級ブランドのバッグを買うことより家で採れたフルーツを持ってくることがステータスになるかもしれません。
豊かさの価値観が変われば、お金をたくさん稼ぐ必要がなくなり、働く時間を減らすことができるようになります。もし週3日だけ働けばよいとなれば、残りの4日間は相当楽しめる循環が生まれます。
ただし、このサイクルを国民全員が行なうと、GDPは下がるし、税収も下がります。これを良しとできるかどうかは大事なことです。
今までは、少しでも給料が高い企業に就職することが偉いように見えて、残業するなと言われても家まで仕事を持ち帰ってまでこなし、少しでも給料が上がると喜んでいたわけです。欲しいモノが買えることが豊かで、それを維持するためにますます働かないといけない。これをずっと繰り返してきて国も企業も喜んでいました。これは個人の発想ではなく、国や企業の発想からくる社会の回し方です。これを逆回転させて、豊かさはこんなものじゃない。むしろ人と一緒に笑いあえることが大事で、そこにお金がかかってなくてもいいと思えたら、楽しいことをする時間の方が大切になるはずです。
これまで地域やコミュニティの存在は、個人にとって「地域の人と仲良くしてつながりができ、いざというときに助けてもらえる」という関係性でした。しかし、人と一緒に笑いあえることが豊かさである、そう思えたとき、地域やコミュニティこそが、お金に代わる、自分の人生の楽しみを見つける源泉になりえます。地域やコミュニティが人生にとってとても大切なものになり、人生に豊かな時間をもたらすものになるかもしれません。そのときに「楽しい時間を生み出すには自分の人生の豊かさがどこから生まれるのか?」ということをみんなが共有することが大切だと思います。そうすることで、価値観を共有できる仲間と一緒にいる時間を長くするには、自分が人生でどのくらい働くべきなのかが明確になるはずです。本来、人はそんなに働きたくなかったはずですから。
コミュニティの概念には、地縁型のコミュニティだけでなく、趣味などで集まるテーマ型のコミュニティもあれば、昨今ではスマートフォンの中にもSNS等でつながっているコミュニティがあります。自分がどのコミュニティを選択するかが、ポイントだと思います。
今回新たに作られる「協働のプラットフォーム」というWEBサイトにおいて、様々な活動をされている人を紹介されると聞いていますが、どんな活動をしているかだけではなく、その人が目指しているような未来、こうあると良いと思っているような生き方のようなものがセットで示されるものになれば、価値観を共有できると思う人同士が仲間を見つけやすくなるサイトになると思います。そんなWEBサイトになることを期待していますし、そこから新たなつながりが生まれるといいですね。