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更新日:2025年2月17日
令和7年「第1回市議会定例会」(2月17日)において、髙島市長が表明した「施政方針」についてお知らせします。
「対話を中心としたまちづくり」を掲げ、市長に就任してからまもなく2年が経過します。
対話集会で、まちなかのイベントで、オンラインで。いまなお様々な声を寄せ続け、芦屋のために行動を続けてくださる市民の皆さまに、私は日々、勇気を頂いています。私だけではありません。市民のために最前線で尽力している職員はみな、市民の皆さまのあたたかい言葉に励まされています。
改めて、芦屋の未来を想い、関わってくださるすべての皆さまに、心から感謝申し上げます。ありがとうございます。
私たちが対話の文化を大切にしているのは、芦屋市をより良くし続けるためには、対話が必要不可欠だと考えているからです。
ともすれば、市役所と市民は、対立関係に思われがちです。市民の想いが届かない。役所の論理が邪魔をする。そんな声を聞いたことがある方もいるかもしれません。
けれど、それは違います。市役所も、市民の皆さまと想いは同じ。ともに、芦屋市を良くしたいのです。
就任以来、芦屋市民の力、芦屋愛を何度も感じました。そして、確信しました。市民を信じて委ねれば、まちは良くなると。
学校の先生の主体的な探究で授業を変える「ONE STEPpers」。
フェード現象による交通事故後の安全対策を市民と行政が一体となって進めた「ライト坂安全ビジョン」。
そして、地元市民が行政を巻き込んでまちのビジョンづくりに取り組んでいる「エリアプラットフォーム」。
どれも、「対話を行い、市民の方々を信じ、委ねたことで、世の中が良くなり始めた」取組です。まさに、みんなで蒔いた種が少しずつ芽吹き始めています。
一方で、私たちは厳しく困難な時代の中に生きています。
人口減少と高齢化。原油価格・物価高騰。そして、世界中で終わらない戦争・紛争。ときには、目の前の現実から、目を背けたくなることもあるでしょう。
でも、未来を描く筆を、止めてはいけません。今こそ、持続可能な未来を、ともに描くときです。芦屋らしく、前向きに進みましょう。芦屋ならできる。芦屋市民になら、できるのです。
市長就任3年目に当たる令和7年度は、芽吹きを育て、未来を描く1年です。本市にとって最も重要な総合計画の策定など、まちの未来を描く機会が何度も訪れます。
また、戦後80年、非核平和都市宣言40周年という大きな節目を迎えます。小中学校では、語り部から聴いた話を次の世代に語り継いだり、自分たちは平和のために何ができるか考えたりする取組みを長年続けています。私自身も、今年の平和首長会議総会に出席予定です。戦争の悲惨さと平和の尊さを、特に未来世代に伝え、ともに語り継ぐことができるよう、記念事業を実施します。
本日は、令和7年芦屋市議会第1回定例会の開会に当たり、私たちが令和7年度に力を入れる取組を3つのテーマ「子育て・教育」「福祉・防災」「みらいの都市づくり」、さらに「公営企業」「行財政運営・行財政改革」に分けて、教育行政に関わる施策も含め、私からまとめて市民の皆さまにご説明します。
1つ目のテーマは「子育て・教育」です。
高齢化が進む芦屋市で、最も重要なのが未来世代たるこどもたちへ向けた投資です。それは本市が、歳入に占める市民からの税収の割合が非常に高いまち、「人」で成り立っているまちだからです。
人口移動を見ると、本市は20代が流出する一方で、20歳未満と30代、40代が流入する傾向にあります。最高の教育環境のもと培った力で広い世界に羽ばたき、子育てのタイミングで帰ってくる。
この傾向を活かすため、学校・家庭・地域での「子育て・教育」を応援し、選ばれる芦屋の実現に取り組みます。
まずは学校。
「最高の学びができる芦屋」の実現には、「誰もが安心して学べる環境づくり」と「学びの質の向上」の2点が必要です。ただし、教師の努力と熱意への過度な依存はできません。
一点目は、教育の基盤たる「誰もが安心して学べる環境づくり」です。
学校は、こどもたちの命を預かる場です。防犯機能の向上を望む声を受け、校門にインターホンとオートロックを設置するとともに、老朽化した防犯カメラを更新します。また、暑い日でもこどもたちが安心して身体を動かせるようにと、令和6年度から準備を始めた小中学校全校の体育館への空調設置は、設置工事を実施し、整備が完了する予定です。
技術進歩が目覚ましい現代にあっても、「人」だからこそできる支援の重要性はますます高まっています。「人」は、「人」によって育つからです。一方で、学校の教員は、心のゆとりをもってこどもたちに向き合うには忙しすぎます。
そこで、「人」による支援をさらに充実します。
令和6年度に開始したPEACEサポーター派遣事業は、こどもたちの心のケアなどを行う取組です。対話集会で「不登校のこどもが登校できるようになった」という声が上がるなど、少しずつ良い影響が出始めています。そこで、令和7年度は配置をさらに拡充し、中学校のみならず市内すべての小学校にも1人ずつ専任のPEACEサポーターを配置します。
日本語指導が必要な外国人児童・生徒も増加しています。日本語指導コーディネーターを配置することで、早期の日本語教育など支援策を強化し、学校への適応を支援します。
様々な特性や支援ニーズを有するこどもたちが増える中では、教員による支援のあり方も多様化しています。そこで、インクルーシブ教育の充実のため、支援員・介助員をさらに増員します。また、こどもの現状を的確に把握するため、ScTN質問紙や学校環境適応感尺度「アセス」といったアンケートなどを引き続き活用します。
教員は日々、こどもたちや保護者と丁寧に向き合っています。そんな先生から、「専門性の高い助言がほしい場面がある」との声を聞きました。そこでより迅速に、現場の教員を法的に支援するため、新たに教育委員会が顧問弁護士を委嘱します。
いじめ防止にも引き続き取り組みます。
いじめはどこでも起こり得ます。そして、隠れて発生しがちです。だからこそ私たちは、こどもが陰で苦しむことのないよう、SOSの声を上げやすい環境をつくるとともに、日々の変化に敏感となり、重大事案化させないことが大切だと考えます。
人権教育を通して、自他の人権を守ろうとするこどもたちの意欲・態度を育むことはもちろん、令和6年度に始めた教育相談コーディネーター養成の研修を引き続き行うなど、いじめの未然防止・早期対応を推進します。
これらに加え、教員がより一層こどもたちに向き合うための働き方改革も進めます。
教育委員会で組織する学校業務改善推進委員会と各校における校内業務改善委員会が連携しながら、引き続き、教職員の負担軽減に取り組みます。
学校園ネットワークシステムの更新にも着手します。職員室の外でも仕事ができる環境の構築、教材作成や外部連絡の効率化による事務の軽減を目指します。
二点目は、教育の充実の本質たる「学びの質の向上」です。「ちょうどの学び」の実現に向けて、取組を加速します。
こどもたちの主体的な探究は、教員の主体的な探究から。
令和6年度に始まった探究的な学び研究推進チーム(ONE STEPpers)は、市内外から高い評価をいただきました。メンバーは市内約300名の教員のうち40名に届こうとしており、教員の主体的な取組の中で、日々の授業も変わりつつあります。
令和7年度は、教員の主体的な探究を一層支援するため、指導主事伴走のプロジェクト型研究を取り入れるなど、さらなる研究の質の向上を図ります。また、教員有志を市外の先進校に1週間程度派遣することで、本市の実情に応じた授業展開・指導方法をより実践的に研究し、探究学習の単元開発を推進します。加えて、GIGAスクールの1人1台端末の更新にあわせて、指導主事やICT支援員等による授業支援ソフトの効果的な利活用方法、情報モラルに関する具体的な指導方法といった研修を進めます。
こどもたちの探究の充実のためには、環境の充実も欠かせません。
学校図書館と地域の市立図書館との連携を進めるため、学校図書館システムの更新にあたり、クラウド型学校図書館システムを導入します。学校図書館から気軽に市立図書館の蔵書にアクセスできる環境を整備し、授業や探究での蔵書の利活用、読書のさらなる推進を図ります。
また、中学校部活動については、令和8年度中の学校部活動の地域への展開に向けて、引き続き協議を進めます。
就学前の教育・保育は、本市がこれまで質の高さにこだわって進めてきた分野です。公立私立を問わず、多くの先生と対話をする中で改めて、日々の現場の努力を実感しています。
具体的には、インクルーシブ教育・保育、医療的ケア児への支援、ICTを活用した教育・保育、円滑な学びの接続を図るための小学校との交流などを各施設で実施しています。また本市では公開保育を伴う研究会・研修会の開催や、私立保育所等への巡回訪問などにも取り組んでいます。
令和7年度はこうした取組に加えて、木育教材の整備を市立幼稚園、保育所・認定こども園で進めるほか、西蔵こども園では熱中症などを防ぐため遮光ネットを増設するなど、より一層、質の高い就学前教育・保育の提供に取り組みます。
一方で、少子化が進み社会情勢が変化する中、どのように就学前教育・保育の質をさらに向上できるかが問われています。そこで、就学前教育・保育施設の現状と市立幼稚園等に求められる役割を踏まえた適正配置と今後の運営について、学校教育審議会に諮問します。
これら教育の取組の中核にあるのは、教育振興基本計画です。この計画を、総合計画後期基本計画の教育施策に位置付けて策定することにより、全庁で「教育のまち芦屋」を推進します。具体的な取組は、より内容を充実させた「新芦屋の教育指針」に記すことで、教育の質の向上を加速させます。
課題も成果も、現場にあります。私たちは、これからもこどもたちと教員の声をより一層聴くために、学校現場への訪問・対話を教育委員会とともに続けていきます。
次は、家庭。
妊娠期からの切れ目のない支援に引き続き取り組みます。
子ども・子育て支援法に妊婦のための支援給付が、児童福祉法に妊婦等包括相談支援事業が創設されたことを受け、妊娠しているこどもの人数に応じて、妊婦を経済的に支援します。また、妊産婦等の身体的・精神的ケアや、妊産婦・配偶者等への継続的な面談、情報発信など、伴走型相談支援の充実に引き続き取り組みます。
また、若い世代が、プレコンセプションケアなどを通して自分の身体や心について知ることで、より主体的な健康管理ができるよう発信を重ねます。
「みらいの都市づくり」の分野では、新婚・子育て世帯の住宅取得等への経済的支援を開始します。本市で子育てをしたい世帯のさらなる増加につながると期待しています。
最後に、地域。
大人も、学びの主体である。その想いで、市民の皆さまが生涯学び続けられる環境の整備を本年も続けます。市民センターはもちろん、海浜公園プールや潮芦屋交流センターテニスコートの改修もその一つです。
生涯学習のなかでは、豊かな暮らしに不可欠な「文化」を大切にしたいと考えています。本市が、日本唯一の国際文化住宅都市だからです。大阪・関西万博が開催される本年は、本市の歴史や文化の魅力を外国人を含めたより多くの方に発信するため、既存の文化財関係のパンフレット・リーフレットの英語版を作成します。ヨドコウ迎賓館をはじめとする「阪神間モダニズム」を中心とした市の魅力発信も、県、近隣自治体及び民間事業者と連携しながら行います。また、国指定史跡・会下山遺跡の保護・活用にも取り組みます。
同時に、市民の皆さまにも本市の豊かな自然環境に触れていただきたいとの思いから、ふるさと寄附金を活用し、ハイキング道の老朽化した階段等の整備を順次行います。また、市の北側からでも図書館を利用しやすくするため、阪急芦屋川駅北側「星座の広場」に返却ポストを増設します。豊かな暮らしや生涯の学びのための環境整備に、全庁をあげて取り組みます。
2つ目のテーマは、「福祉・防災」です。
芦屋市は、高齢化率が3割を超える市です。「何歳になっても生き生きと活躍できる芦屋」の実現に向けて、高齢者施策をはじめ、福祉施策の充実にも取り組みます。とりわけ、要支援・要介護の認定割合が22%まで伸びている本市では、「人」への支援が重要との想いから、支援の担い手として、日々福祉を支えてくださっている方々への支援を進めます。「人」は、「人」によって支えられるからです。
在宅介護の担い手確保には、訪問時の安全担保が重要です。利用者やその家族からの暴力行為対策として、2人体制で介護サービスを提供する必要がある場合に、介護報酬の一部を補助します。これにより、訪問看護師・介護員が安心して働ける環境づくりを支援するとともに、離職防止を図ります。
また、障がい福祉に関する資格取得に対する補助を行います。新たな人材の確保や障がい福祉サービスの質の向上を図ることで、サービスの安定供給を目指します。
福祉分野においても働き方改革を行う上では、DXは欠かせません。
居宅介護支援事業所と介護サービス事業所との間でデータ連携を行うケアプランデータ連携システムの利用料を補助します。事務作業に係る勤務時間の削減と効率化を支援し、市全体の介護力と満足度の向上を図ります。
また、一人暮らしの高齢者等が急病や事故により緊急援助を必要とする際に対応する「緊急通報システム事業」を拡充します。携帯型装置の導入や鍵預かりサービスの拡充により、より多くの一人暮らしの高齢者等の不安を解消し、地域の見守り体制の確立を目指します。
もちろん、介護や支援が必要になる前の予防の取組も一層進めます。
介護予防・健康づくりへの興味関心を高めるため、通いの場への医療専門職の派遣に取り組むとともに、公共施設において立ち寄り型のフレイル予防講座を実施するなど、内容の充実を図ります。
また、若いうちからの健康づくりが重要であることから、若い世代の予防医療にも取り組みます。
歯科健診の節目検診を20歳、30歳にも拡充します。これまでの40、50、60歳とあわせて、歯科健診の機会を確保することで、歯周疾患の予防と啓発を進めます。
HPVワクチンのキャッチアップ接種は、令和7年度がラストチャンスです。平成9年4月2日から21年4月1日生まれの女性が、HPVワクチンを令和4年度から6年度までの3年間に一度でも接種した場合、接種完了に必要な費用を無料にします。
様々な生きづらさ、困難を抱えた方々への支援も充実します。
生活困窮者の自立支援には、複合的な課題や制度の狭間の課題解決が欠かせません。引き続き、多機関の協働による相談支援体制の充実や社会参加の推進を図るとともに、貧困の連鎖防止に向け、子どもの学習・生活支援事業の充実に取り組みます。
また、増え続ける外国人市民や多国籍化に対応し、外国人市民の参画を促進するため、多言語相談窓口の周知、やさしい日本語での情報発信、多文化共生理解事業を実施するほか、生活のための日本語を学ぶ日本語教室の体制づくりを開始します。
市民の皆さまの命と財産を守ることは、私たち行政の大切な使命です。原油価格・物価高騰といった社会経済情勢の大きな変化には、機動的な予算措置を通じて適時適切に、様々な取組を通じて市民生活を支援します。
しかし、予測できないのが自然災害です。
昨年は、令和6年能登半島地震、南海トラフ地震臨時情報、奥能登豪雨等、私たちが日々自然の脅威に向き合いながら暮らしていることを実感した1年でした。また、本年1月17日には阪神・淡路大震災から30年の節目を迎えました。未来世代による継承が一定の成果を上げ、市内で防災意識が高まっている今こそ、市民の皆さまとともに、より一層災害に強いまちづくりを進めるときです。
市役所でしかできない防災施策は、市役所が責任をもって行います。
小中学校全校の体育館への空調の設置を完了し、暑い日でもこどもたちが安心して身体を動かせる環境づくりに加え、いざというときの避難所の環境改善を図ります。
昨年5月に珠洲市を訪れた際に、現地の方が強調されていたのが行政による迅速で的確な情報発信の重要性でした。本年1月26日の防災総合訓練でも活用した防災行政無線システムをより聞こえやすく更新します。また、大規模災害時等に的確に情報収集を行い、市民の皆さまに即座に伝達するため、新たに防災情報システムを導入します。これにより、ひょうご防災ネットなどに一斉に情報配信ができるようになります。まだ登録がお済みでない方は、ひょうご防災ネットへの登録を、どうぞよろしくお願いします。
しかし、いざというときに自らの命を守れるかは、市民の皆さま一人ひとりの備えにかかっています。本市は、住宅の耐震化率が県内で最も高い自治体です。いざというときには、避難所ではなく在宅での避難も可能でしょう。備蓄とともに、災害時に備えた家具や家電の転倒防止も行っていただきたい。その想いから、相談員を申請者宅に派遣し、転倒防止器具の選定や設置箇所、設置方法などのアドバイスを行う事業を開始します。
福祉と防災。それぞれの分野の基盤となるのは、地域の力、市民力です。
この2年弱、様々な地域の現場をまわり、市民の方々とお話する中で、改めて地域の平時のコミュニケーションが、いざというときの力になると学びました。
そのためには、集会所や公園などの市民が集まる場が重要です。引き続き、地区集会所の適正な維持管理や、地域コミュニティの活性化に取り組みます。また、地域の力の向上には、自治会や自主防災会、コミスクといった団体の力が欠かせません。地域の人と人とがつながり、安心して暮らせるまちづくりのため、地域の活性化に向けた支援も引き続き行います。
また、市外で働いている方が多い本市では、日中に市内で商工業を営む方の力も重要です。商工会と連携して地域経済の活性化に取り組むとともに、新たに事業継続等の事業者向けのセミナーを実施します。
地域の力が最も発揮されている例の一つが、エリアプラットフォームの活動でしょう。地域と事業者が主体となった活動を、引き続き支援します。
3つ目のテーマは、「みらいの都市づくり」です。
住宅都市の芦屋市にとって、みどり豊かな美しいまちなみこそ、魅力の源泉です。明治38年の阪神電鉄開通から芦屋が郊外住宅地として発展してきたのも、自然環境が豊かで健康的に生活できることが評価されたためでしょう。人口減少や高齢化が進む中でも「世界で一番住み続けたいまち、芦屋」を創る基盤となる、持続可能なみらいの都市づくりを進めます。主なテーマは3点です。
1点目は、持続可能な都市構造の形成です。
本市は、まちの持続的な発展を目指す上で、都市機能を有する拠点と住宅地とをネットワークで結ぶビジョンを描いています。その実現には、都市機能を有する拠点の再整備と、交通ネットワークの強化が不可欠です。
拠点の再整備では、JR芦屋駅南地区第二種市街地再開発事業をさらに推進します。用地取得と各設計を仕上げ、再開発ビルなど本格工事の早期着工を目指します。資材費・人件費が高騰する中ではありますが、完成に向けて市役所一丸となって引き続き邁進します。
また、阪神芦屋駅周辺においても、今後の都市整備の方向性を定めるための、基礎的な調査・検討を始めます。
交通ネットワークの強化では、誰もが安全・安心で快適に移動できるまちづくりのために、デマンド型乗合タクシーの試験的運行をバス路線から離れている三条町、山芦屋町を中心とした地域で行います。取組の検証は、利用状況や既存公共交通への影響、地域住民の意見などを踏まえて行います。
2点目は、良質な住宅ストックの継承です。
人口減少・少子高齢化が進む中、本市では空き住戸が増え始めるなど、本市の誇る良質な住宅ストックの継承が課題となっています。対話集会でも「空き家が増えて心配だ」との声を、何度も伺いました。
本市は、令和6年度に策定する住生活基本計画の中で、基本理念として「住宅都市の魅力を高め、良質な住宅ストックを次世代に継承する」ことを掲げました。この実現のため、重点施策として取り組むのが「いい家あった!プロジェクト」です。
「市営大東町住宅リフォーム活用」では、市営大東町住宅の空き住戸をリノベーションし、若者・子育て世帯向け住宅として有効活用します。「住宅ストックの取得・賃借支援」では、新婚・子育て世帯の戸建て・マンションの購入や賃借を支援します。あわせて、マンションの適正管理を進めるための長期修繕計画を策定する費用の補助をマンション管理組合に対して行います。
若い世代からは「芦屋市は住居費が高く、実家を出たら転出せざるを得ない」という声もしばしば聞きます。良質な住宅ストックが若者・子育て世代をはじめとする次世代にも継承されることが、ひいては人口減少・少子高齢化の緩和にもつながると考えています。
3点目は、「みどり豊かな美しい住宅都市」の継承への決意です。
先人たちが守り・育ててきた「みどり豊かな美しい住宅都市」の継承には、市民の皆さまによる価値の再認識が欠かせません。本市の魅力の源泉がいかに稀有か、そして今後どのように継承していくか、その思いを共有し市民の皆さまと学び合う1年にしたいと考えています。
毎年恒例の芦屋オープンガーデンは20回目の節目を迎えます。例年のスタンプラリーに加え、市民が交流できる企画とともに参加者のパネル展示を行うなど、花と緑があふれるまちづくりを進めます。
また、都市景観フォーラムを11年ぶりに開催します。景観行政団体移行から11年を経た本市のこれまでの歴史や取組、これからの景観行政について、有識者による講演や意見交換などを通じて市民とともに学び合う機会です。
この「みどり豊かな美しい住宅都市」を未来世代へ継承するためには、財源確保も欠かせません。新たに附属機関を立ち上げ、財源確保のあり方を検討するほか、必要な例規の見直しや制度の構築に取り組みます。
その他にも、ブランディングエリアでは、地域と事業者が主体となり、公共空間等を活用した社会実験を実施するとともに、地域の将来像を未来ビジョンとして策定します。さらに、ミラタップパーク芦屋北西角付近へのドッグラン整備や、芦屋川地区並びに六麓荘地区の無電柱化推進など、まちの魅力向上のための事業を推進します。
暮らしを支えるごみ処理については、パブリックコメントで頂いた多くの声を踏まえつつ、神戸市との可燃ごみの広域処理の協議を進めます。ゼロカーボンシティの実現に向けて、新たな再資源化の取組を検討するなど、持続可能な社会の構築に取り組みます。
続いて、「公営企業」です。
芦屋市の公営企業は、いずれも市民生活に不可欠な役割を担っています。新たな技術を取り入れながら、中長期的な経営戦略のもと経営基盤強化に努めます。
市立芦屋病院では、小児医療の実施や積極的な救急患者の受入れ等、政策医療の実施に努めます。
医師の働き方改革、コロナ禍による受診者の行動変容、物価・賃金の上昇に伴う経費の急増に加えて、厳しい診療報酬改定により、公立病院はいずれも厳しい財政状況です。芦屋病院も例外ではありませんが、高齢者に多い疾患に対応した医療、がんの診断・治療から緩和ケアへの切れ目ない医療、身体の負担が少ない低侵襲の手術等の特徴を積極的に広報し、経営改善を図る仕組みを強化することで、収益増につなげていきます。
また、地域の医療従事者と共に新興感染症についての学習機会を持つなど医療機関、介護保険施設との連携をより深め、地域全体の医療の質向上に寄与します。さらに、南海トラフ地震や新興感染症に備えて、BCP(事業継続計画)を確立します。
水道事業では、老朽管の更新を着実に行うことに加え、令和6年度に実施した人工衛星画像を活用した漏水調査の結果をもとに、漏水が疑われる箇所を重点的に調査します。引き続き安全・安心でおいしい水の供給に努めるとともに、水道ビジョンや水道事業経営戦略に基づき、経営基盤強化の取組も継続して実施します。
下水道事業では、ストックマネジメント計画に基づく管路等の点検調査や老朽管の改築工事を進めます。また、引き続き下水道ビジョンや下水道事業経営戦略に基づく経営基盤の強化に取り組みます。
下水処理場、雨水ポンプ場では、効率的な維持管理を行えるよう日常点検管理を行い、施設の機能保全に努め、計画的に改修や更新を行います。また、耐震工事や場内ポンプ場の雨水ポンプ更新工事を継続して進めます。
最後に、「行財政運営・行財政改革」です。
私たちはいま、大きな時代の変化に直面しています。人口減少の大きな流れの中でも刻々と変わる社会経済情勢の中で、新たな行政課題も生まれています。しかし、財源と人手には限りがあります。
だからこそ私たちは、人口減少に「緩和」と「適応」で立ち向かっていきたいのです。
人口減少の「緩和」を図るための施策を的確に実施する。そして同時に、縮小・廃止を含めた事業の見直しを行い、市民サービスの維持・向上に留意しつつ、事業の再構築に努めることで「適応」を図る。その過程では、社会の変化を踏まえた事業の有効性や必要性の精査はもちろん、優先順位をつけた上で、投資や費用に見合う効果を上げるために事業手法のブラッシュアップも行いました。
「子育て・教育」「福祉・防災」「みらいの都市づくり」を中心に据えた今年度の予算編成は、持続可能なまちづくりを推進するための大切な一歩です。
歳入については、市税収入の増加を見込んでいます。給与所得の増加や令和6年度に実施された定額減税の終了分による個人市民税の増加によるものです。
歳出については、児童手当や障がい福祉などの扶助費が大きく増加しています。JR芦屋駅南地区再開発事業や、小中学校の体育館への空調整備など、「世界で一番住み続けたいまち」を創り上げるため、未来を見据えた投資も行う予算を編成しました。
以上のように編成した令和7年度の歳入歳出予算は
一般会計 491億5,800万円(対前年度比4.7%増)
特別会計 240億6,150万円(対前年度比7.3%減)
企業会計 162億3,088万円(対前年度比5.3%増)
財産区会計 1,250万円(対前年度比52.8%減)
合計 894億6,288万円(対前年度比1.2%増)
です。
予算の執行に当たっては、ふるさと寄附金を含めた歳入の確保に一層努めるとともに、事務事業の効率化・適正化を進めつつ、第5次芦屋市総合計画に掲げる目標の実現に向けて、練り上げた施策を実行します。
特に本年は、行財政改革を一層進めるための重要な1年です。人口減少社会に「適応」し、持続可能な行政運営を推進するため、新行財政改革基本計画、公共施設等総合管理計画並びに公共施設の最適化構想を見直します。市民の皆さまとの対話を大切に、学識経験者の意見も踏まえながら、市の未来をともに描きます。
公共施設に目を向けると、今年築65年を迎える市役所北館の更新が近づいています。建て替えを適正な規模に留めるためにも、業務効率化とあわせて、執務スペースの適正化を進めます。
また、課題解決のためには職員の力を今まで以上に引き出し、活かすことも重要です。
職員のスキルの柔軟な活用等を促す業務改善サポート制度や外部団体との連携をはじめ、課の縦割りにとらわれず、各種事務のデジタル化の取組を進めます。あしや市民活動センターへのキャッシュレス決済導入をはじめとする市民サービスの向上はもちろん、業務負担の軽減や業務変革人材の育成を図ります。
さらに、住民記録システムをはじめとした20業務について、ガバメントクラウドを活用した標準準拠システムへの円滑で安全な移行を目指し、行政運営の効率化に取り組みます。
「予算はあくまでスタートです。予算がつけば、課題が解決するわけではありません。予算を活かせるかどうかは、私たち市役所と、そして何より、市民の皆さまにかかっています。ぜひ、この予算に息を吹き込んでください。今回進める施策が、息の長いものであり続けるように、賢く使い、守り、発展させてください。」
これは、私が昨年2月の施政方針演説で、市民の皆さまに呼びかけた言葉です。
この1年間、新しい予算で新たな取組がたくさん始まりました。たくさんのお声を頂きました。そして、少しずつ変化を感じています。
年16回の対話集会は、変化の象徴です。
個人の利益から、みんなのウェルビーイングへ、話される内容が変わったこと。
一人で抱えていた問題が、みんなの社会課題へ、認識が変わったこと。
そして、解決は市役所に任せようという姿勢が、一人ひとりの行動への意欲へ、変わったこと。
持続可能とは、我慢することではありません。市民一人ひとりがウェルビーイングに暮らし、可能性が拓かれる、そんな社会をともに、創り続けることです。
市民と事業者、行政が共創するからこそ、まちがよくなり続ける。それを実感させてくださったのは、市民の皆さまです。改めて、ありがとうございます。どうかこれからも、予算に息を吹き込み続けてください。
そして、議員の皆さま。
2年弱の議論の中で、私たちはみな、芦屋市を良くしたいという想いを共有しているのだと、改めて認識しました。市民の命と財産を末永く守るために、どのような道を選ぶか。ときに意見が分かれても、皆さまの主張の裏側にある思いを理解したい、真摯に向き合いたい、その想いは変わりません。困難な決断をするときこそ、一方的な主張ではなく、対話だと信じます。ともに、芦屋をより良いまちにしていきましょう。
さあ、また一歩、踏み出すときです。芦屋市の皆さま、芦屋市が「世界で一番住み続けたいまち」になるその日まで、ともに歩み続けましょう。
私たちは、誰よりも芦屋のことを考え、誰よりも芦屋のために行動し続ける、そのことを、改めてここに固くお誓い申し上げます。
どうぞ、議員の皆さま、市民の皆さま、引き続き、ご支援とご協力を賜りますよう、心よりお願いいたします。
「その他の主な取組」につきましては、PDFファイルの26~33ページをご覧ください。
「中・長期計画の策定スケジュール」につきましては、PDFファイルの34~35ページをご覧ください。