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更新日:2025年1月16日
芦屋市内の教職員による研究チームを結成し、芦屋の子どもたちの実情に応じた探究的な学びを研究していきます。
これまでの研究推進事業とは違い、「探究的な学び」に関心の高い教職員が自らの意思で集まり、協働しながら研究を推進する仕組みとなっています。
芦屋市の子どもたちの「学習意欲」や「協働性」、「自己肯定感」や「学校生活の充実感」を高める研究を進めていきます。
第9回の会合では、宮川小学校の3年生で実践された概念型探究学習の取り組みについて、森教諭から報告がありました。
宮川小学校の3年生は、生物多様性や自然を守るために自分たちの行動を見直すことを目的として、芦屋川を探検したり、地域の環境団体の取り組みについて学んだりしました。
参加した教員から質問が集まったのは、森教諭が用意したワークシートです。
森教諭は授業を行なうにあたり、「様式が異なるワークシート」を複数種類用意して授業に臨まれていました。
子どもたちは、自分の興味・関心や、得意・不得意に応じて、自分にちょうどよいワークシートを選択し、自分の考えを表現します。これによって、従来の文章だけによる記載ではなく、図やグラフ、イラストなど視覚資料を用いながら多様な表現方法で自分の考えを表現する子どもの姿が生まれました。
また、森教諭が組み込まれた複数回の体験活動にも良い効果が見られたとの報告がありました。
具体的には、友達と協力しながら実際に芦屋川探検を行なうことで、これまでとは異なる新しい仲間との人間関係が構築されたり、自然と人間の活動とのかかわりについて深く理解したりする子どもの姿が見られたそうです。
講師の山口先生からは、概念は「経験の総体」であることからも、体験的な活動を充実させることが子どもの概念を構成する上で大切であるという助言がありました。また、概念は子ども一人ひとりによって異なることから、子ども同士が対話する機会を十分にとることで、概念に深まりが出るとの助言もいただきました。
第8回の会合では、岩園小学校で10月25日に行われた公開授業の報告を通して、子どもの主体性を育む教育についての理解を深めました。
この岩園小学校の公開授業は、県外を含め70名を超える方にご参加いただけただけでなく、その実践をメディアにも取り上げていただくなど、高い関心を寄せていただくことができたイベントとなりました。
リフレクション会議の中では、授業を公開をした3年生担任近藤教諭、4年生担任松尾教諭、図工専科辰巳教諭の実践についての報告がありました。
どの実践においても、共通して大切にされていたのは、学習場所における「環境構成」です。例えば、3年生の算数の授業では、用途ごとに使い分けができる様々な種類のはかりを用意したり、消防服やフラフープなど、工夫しなければ計ることができないような教材がたくさん置かれたりするなど、子どもが試行錯誤しながら体験的に取り組むことができるように工夫されていました。
4年生の社会では、兵庫県の特産品が所狭しと並べられており、子どもたちが実際に手に触れることできるようにされていました。また、友達と相談しながら学ぶことができるスペース、一人でじっくりと調べることができるスペースなど、子どもたちの学び方に合わせた学習スペースが確保されていたのが特徴的でした。
5年生の図工は光と影を使って空間を彩ることが目標でした。この実践では、図工室だけでなく、和室でも活動することが可能になっており、子どもたちが表現したいことに合わせて場所を選ぶ姿がありました。また、図工室には、様々な道具が設置されており、子どもたちは、選んだ道具によって変わる影の姿に驚きの声をあげながら取り組んでいました。
どの実践においても、場所や教材などが複数設定されており、子どもたちが自分の興味関心に応じてそれらを選択しながら活動することができたというところが共通する特徴となっていました。
授業者が調査したアンケートによると、こうした授業では、「主体的に取り組むことができた。」と回答する子どもの割合が、教師主導型の一斉授業に比べ、高かったことが報告されています。
また、単元末に実施するテストにおいても、思考力を問う問題において高い正答率が見られたとの報告もありました。
講師の山口先生からは、教科のねらいや、教科特有の見方・考え方を授業者がしっかりと持った上で授業設計をすることで、子どもたちの主体性を育みながらも確かな学力を合わせて身につけていくことができるとの助言をいただきました。
第7回の会合では、打出浜小学校5年生担任の藤原教諭と渡邉教諭の実践報告を通して、子どもの主体性を育む教育についての理解を深めました。
打出浜小学校5年生では、これまで一斉一律に出していた宿題を、子どもが自分で課題を決め取り組む自主学習へと変えました。
この自主学習では、子どもが自分の課題に応じて苦手な計算問題にチャレンジしたり、漢字の書き取りに取り組んだりします。また、自分の興味があることを深く調べることで、好きなことや得意なことを伸ばす子どももいます。
自分で課題を決めることで、一斉一律の宿題に取り組んでいた時よりも学習効率が上がったほか、学習に取り組む子どもの意欲も向上し、ノートを丁寧にまとめたり、好きなことを詳しく調べて深く学んだりする子どもの姿が見られるようになったそうです。
また、算数の分数の足し算と引き算の単元で取り組んだ自由進度学習でも、一斉学習と比較すると学習の定着が見られ、子どもの主体性も向上したことが報告されました。
この自由進度学習は、さらに難しい問題にチャレンジすることも、納得のいくまでじっくり取り組むこともできます。教師も、困っている子どもに対してより手厚くサポートをすることができるため、一人ひとりの理解度に合わせた支援が可能になります。個別に最適な学習課題と、必要な支援を得られるという点で、学習効果が高まり、学習の定着につながったと考えられます。
また、自由進度学習は、学習場所や学習方法、学習ペースを自己決定できるという特色があります。打出浜小学校の5年生でも、一人でもくもくと学ぶ子どももいれば、友達と教え合いながら学ぶ子どももいることが報告されました。今日どこまで学び、何ができるようになりたいのかを自分で決め、そのための学習方法を自ら考案することによって、子ども自身の主体性が伸びていると考えられます。
このほかにも、学校に休みがちの子どもが、毎日学校に来るようになったことが報告されるなど、個別最適な学びの実現が、学校の中での安心感にもつながっていると考えられる報告がありました。
一方で、だれと学ぶのかを子どもが自己決定できるため、学ぶ仲間の固定化と人間関係の固定化もあわせて見られるとの報告がありました。個別最適な学びを実現しながらも、人間関係を広げる取り組みに変えていくにはどうすればよいのか、藤原教諭と渡邉教諭も悩みながら日々実践を積み重ねているようです。
講師の山口先生からは、子どもたちの個別の課題を全体で共有することで、同じ課題、似た課題同士で学び合おうとする人間関係が生まれ、これによって新たな人間関係に発展するとの助言をいただきました。
第6回の会合では、現在、iGEM Grand Tokyo で生命工学を研究し、国際的なコンテストにも出場する高校生の谷さんをゲストとして招き、「探究的な学び」の必要性やその充実を図るための教師の支援について協議を深めました。
谷さんは、幼少期から「生命」の存在に興味があり、図鑑や博物館などで「生命」について調べる機会が多かったそうです。
そんな谷さんの心に残っている授業について尋ねたところ、自分で育てた植物の観察や、小学校高学年で経験した個人探究の時間と保護者に向けた発表の時間を挙げてくれました。
谷さんは、好きなことに夢中になることを応援してくれたご家族や、興味のあることを探究する時間を設定してくれた当時の先生たちにとても感謝をしているそうです。
自分の思いや考えを明確な言葉に変えながら堂々と話をする谷さんとの協議を通して、あらためて「子ども自らが学ぶ」ことの大切さを私たちも感じました。
参加した教員からも、「これまでは目標を教師が設定し、子どもに押し付けてしまうことがあったが、谷さんの話を聞き、子どもと一緒に目標を設定したり、活動を考えたりすることの大切さについて考えさせられた。」との意見がでました。
講師の山口先生からは、谷さんがご家族や教師からのサポートに恵まれたように、小さいころからの人との結びつきやかかわりが、探究的に学ぶ子どもの意欲を支えるという助言がありました。
第5回の会合では、2学期に実施する朝日ケ丘小学校の宿泊学習の取り組みに関する報告をもとに協議を深めました。
芦屋市では、小学校4年生の教育活動の一環として1泊2日の宿泊学習を実施します。
今回、特に朝日ケ丘小学校では、「子どもの主体性を育む」ことを重点に宿泊学習の単元を開発しました。単元の開発にあたっては、1.「活動の目的」から問い直す。2.宿泊学習全体の単元計画を教師がしっかりと立てておく。3.可能な限り学年全員で活動する。4.学習の目的や育みたい力を保護者と事前に共有する。という4つのポイントを大切にしています。
報告を受けて協議に参加した教員からは、
といった意見が出されました。
また、講師の山口先生からは、子どもに委ねる学びを実現する際には学習課題の水準が大切であり、この水準が子どもにとってやりがいがある程度高いと、子どもたちは深く学び、また、他者との協働も主体的に求め始めるという助言がありました。
第4回の会合では、先進校を訪問した教員からの報告をもとに協議を深めました。
「自由進度学習」の先進校である東浦町立緒川小学校と名古屋市立山吹小学校を視察した教員からは、自分の学びを選び、決め、進める力が子どもたちの中に育っているとの報告を受けました。両校とも、学習計画表をもとに、学習進度や学習方法を子ども自らが考えるところに特徴があります。また、毎時間のふりかえりを積み重ねることで、進捗状況を子ども自らが把握し、自己調整をしながら学ぶ姿が見られたとのことでした。
「PBL」に特色がある名古屋市立矢田小学校では、実社会、実生活に根差した本物の学びを中心としながら、子どもたちが問いを見つけ、その解決を目指す学習活動が設定されていることが報告されました。参観した授業では、どの子も意欲的に学習に参加し、活気にあふれた授業が展開されていたとのことでした。
いずれの学校にも共通する点として、最上位目標である目指す子ども像が全教職員の中で共有されていること、その実現に向けて教師同士が日々対話し、建設的な議論を進めているところに特色がありました。また、学びの主役を「子ども」とし、子どもが主体的に学ぶために教師は「支える」役に徹する点も共通しています。
先進校では、教師が教室の前に立ち、決まった内容を決まった方法で教えるという授業から、子ども一人ひとりが学びのコントローラーを自分の手に持ち、自分の力で学ぶ授業に転換が図られようとしています。視察に参加したONE STEPperも大いに刺激を受け、学びを得た視察となりました。
第3回の会合では、「自由進度学習」に取り組んでいる教員からの実践報告を通して、子どもの主体性を育む教育活動について対話しました。
子どもが学ぶ場所や、学び方を自ら選ぶ「自由進度学習」では、従来の一斉学習と比較すると、主体的に学ぼうとする子どもの姿が多く見られたとの報告がありました。また、子どもが自ら「選ぶ」過程の中で、自分自身の課題に出会い向き合う時間が生まれることも、子どもの主体性が発揮・伸長されるきっかけになっているようです。
一方で「自由進度学習」だけでは、十分に主体性を発揮することができない子どもや、深い学びに到達しないケースがあることも指摘されました。学びを深く本物にするためには、経験学習的なアプローチも必要になるため、今後は、PBL(Project Based Learning)の研究も進めていく必要があります。
6月24日には、「自由進度学習」を先進的に取り組んでいる東浦町立緒川小学校、6月28日には、「自由進度学習」に特色がある名古屋市立山吹小学校と、「PBL」に特色がある名古屋市立矢田小学校へ出張研修に行きます。
次回第4回は、出張研修の報告会です。
第2回の会合では、「ONE STEPpers」に所属する教員が「探究的な学び」を推進する上で、現在抱えている悩みや、取り組んでみたいと考えていることを出し合い、山口先生からご助言をいただく会としました。
「探究的な学び」を推進するためには、これまで以上に、子どもの主体性を大切にした学習活動に取む必要性があります。そして、その実現を図るためには、子どもたちに「委ねる」学習を学校の中に創造していく必要性があるとの意見が多くの参加教員から出されました。
講師の山口先生からは、「委ねる」学習を創造するためには、子どもを信頼し、承認するという教師自身の心構えの大切さとともに、学習活動の中に、子どもたちが自ら「選択」し、「決定」する機会を、可能な限り最大化していくことが重要であるという助言をいただきました。
【演題】「そもそも学校は何のため?」から考える、これからの学校 〜「学びの構造転換」に向けて〜
【講師】苫野 一徳 先生
お二人の先生をお招きし、第1回の会合を行ないました。
苫野先生には、芦屋市教育委員会の教育アドバイザーを務めていただいており、山口先生にはこれから「ONE STEPpers」の専任講師として、指導助言を賜ります。
1回目の会合では、苫野先生に「そもそも学校は何のため?」から考える、これからの学校 〜「学びの構造転換」に向けて〜という演題でご講演をいただきました。
また、参加教職員同士で、これからの授業で取り組みたいことや、今取り組んでいる中での悩みについて対話を行ない、共有された話題について講師の先生から助言をいただきました。