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更新日:2014年12月5日
第1回研修会の記録の続き
さて、次に、地域福祉計画とは何かです。
計画というのは地域福祉計画に限らず、基本的に、目標づくりであり、目標を体系化することです。たとえば、「認知症になっても安心して暮らしていけるまち、芦屋」を目指すこと。もしそういう状態になったら、警察もさっと動いてくれるとか、行政もすぐ動いてくれるとか、そういう目標がいる。住民はそういう人を見たら優しく声をかけてあげよう、叱らないでとにかく優しく声をかけようという目標を持つ。これは住民運動としての計画じゃないんです。そういう風に大きな目標、中くらいの目標、小さな目標とくくるわけですね。目標の体系をつくるのが計画です。
2つ目は言うまでもないことですが、夢づくり。先を見て考えることです。お役所では今頃、そろそろ来年度の予算編成の時期に入ってくる。予算は1年単位で、議会で承認してもらって、4月からスタートする。1年単位でしか具体的な仕事ができません。行政の仕事に限らず、私たちの暮らしもそうですが、1年ごとじゃなくて、もっと先を見ながら、3年先、5年先を考えるのが計画です。お金がなくても、目標があれば頑張れますが、目標がなかったら、今の痛みは単なる辛いことでしかないわけです。「これが実現するから、今は我慢しよう」と思えるわけですね。そういう先の姿をつくっていく。みんなで協力できる夢って何か、それをつくろうというのが、計画です。
3番目は、行政計画ですから、需給調整。これだけのお金、これだけの資産、これだけの人材しかない。それらを効果的、有効的に使うにはどうしたらよいか。一方ではこんなことをしてほしいという要望や要求があります。それをマッチングさせなきゃいけない。たとえば、家を建てる時。「システムキッチン」「フローリング」「バリアフリー」、いろいろあるけど、いざとなったらお金が足りない。そういうときは、「フローリングはやめとこう」というふうに、お金と相談してから決めるでしょう。役所でも同じです。先立つものがなかったら、いくらいい夢でも実現できない。夢と現実をすり合わせて描くのが計画です。
4番目は、合意形成。役所の人、市民、議会と、多くの人が合意をつくるとこです。限られた財源の中で何かを実現しようと思ったら、みんなが「これでよし」と思わないとなかなか難しいですね。そこで、「みんなで目標やルールを決めよう」というのが計画です。
5番目は大事な点で、住民が参加をしてつくること。これは他の計画と随分違っています。確かに介護保険事業の計画も、1号保険者、2号保険者が参加しています。しかし、事業者や、老人クラブ、家族の会、受益者、ボランティアなどの参加は少ないです。多様な住民が参加しているのは、地域福祉計画だけです。
地域福祉計画は住民のための計画でもあります。私たちは、こんなことをしたい。それは、ちゃんと役所が認めてほしい。そして時には、支援もしてほしい。支援にもいろいろありますから、どういう支援がいるのかを考えていく。こういうことが計画の特徴です。
レジュメには書いてませんが、最後にもう1つ大事なことは、合意形成とよく似ていますが、計画は公文書だということです。頭の中で考えて計画だと言っても、文字にしないと誰にも分かりません。公文書であるとはどういうことか。政策文書で1番縛りが厳しいのは条例です。議会で決まったらなかなか変えにくい。だけど、そこまでいくのには時間がかかる。反対に簡単なのは、内部でのメモ。その中間が、協定や覚書です。これらは、関係者以外は見えにくい。法律や条例は公開されますから当然分かります。計画はその中間で、従来の言葉では要綱とか、通達、あるいは行政の方針を示す文章にあたります。だから多くの場合は、「地域福祉計画に書いてありますから、それに基づいてつくりました」と報告だけでいいんです。もちろん、予算は「地域福祉計画に基づいて、こういう事業をやりますから認めてください」と議会に諮ることはありますが。
計画というのは、市長や、市長のもとで仕事をしている部長といった方々の、5年先の行政方針なんですね。ただ、その行政方針は、行政だけに任せるのではなく、私たちも参加してそこにいろいろ書き込める。そういう文書なんです。
今日から始まる市民会議は、そのとっかかりです。みなさんの率直な意見を、今のうちから来年度に向けて用意していこうと。だいたい、どこの自治体を見ても市民参加というより「お客様」で、ガス抜きか、市民の1人として「一応聞いたぞ」ということが多いし、参加する市民の皆さんも、みんな大人しい方々です。でも、「もっともです」「おっしゃるとおりです」というのでは、意味がないでしょう。市民には、「これ、違うよ」と言う役割がある。あんまり難しく考えなくていいんです。日々の暮らしの意見を言ってください。