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更新日:2014年12月5日

資料編【第2回研修会の記録1】

第3章資料編の続き

第2回研修会の記録

講師:関西学院大学社会学部牧里毎治教授

日時:平成18年3月23日(木曜日)午後4時から6時

場所:市役所分庁舎大会議室

テーマ:地方分権と地域福祉計画の策定・評価によせて

事務局:ワークショップが終わって、今日は地域福祉の勉強会ということで、関西学院大学の牧里先生にお越しいただきました。レジュメは資料としてご覧いただきながら、牧里先生と一緒に地域福祉を勉強する研修会です。今日は市民会議のメンバーにはお知り合いのかたにもお声をかけてくださいとお願いしていましたので、何人かメンバー以外のかたにもお越しいただいています。それは大歓迎です。これからも地域福祉のいろんな会をさせていただきますが、そんなときもどうぞ皆さんお声をかけていただきたいです。市民会議の中でも、ネットワークを広げましょうというのが1つのテーマだったと思いますので、この機会にどんどんお声をかけて、ネットワークを広げてください。

改めまして、牧里先生を紹介いたします。ご専門が地域福祉、コミュニティワーク、住民自治という研究テーマでいらっしゃいます。今日はその辺の話をしていただきます。また、今日は特別参加として、神戸学院大学の藤井先生にお越しいただいています。(藤井先生と牧里先生は前からのお知り合いでいらっしゃいます。藤井先生は地域ケア会議に来ていただいている先生です。それで先ほどまで会議がありまして、それが終わったということで、そのままお越しいただいています。)

早速、牧里先生から1時間くらいお話をいただきまして、それから、皆さんからいろんなことをお話しいただけたらと思います。よろしくお願いします。

牧里:随分ご無沙汰しまして、途中が抜けてすみませんでした。でも丁寧な速報をいただくことで、皆さんがどんなことを議論されているのか、どんなことを作業されているのかということを知りまして、私も参加しているという臨場感を感じました。

議論の結果も、速報の第4号でいただきました。皆さんがいろいろと議論されたことが5つの優先課題として挙げられていますね。何が5つの優先課題か覚えていらっしゃいますか。手元にないと忘れているかもしれません。皆さんが挙げられたのは、

  • 1)活動実践者の発掘・育成が大事だということ、
  • 2)生活弱者の方を忘れてはいけないということ、
  • 3)皆さんの悲願である総合福祉センター、活動拠点がいりますよということ、
  • 4)また、活動を進めるには住民と行政が協力するような仕組みをつくらないと駄目なのではないかということ、
  • 5)住民も自治会、老人クラブやコミスクのネットワークをつくらなければ、一人ひとりが力になれないのではないかということでした。

ちょっとおこがましいですが、これらはいい線いっていると思いますね。というのは、生活弱者の方の問題は案外抜け落ちがちなんですね。行政とタイアップしていくというのも、どちらかと言えば、行政にやらせておいたらいいじゃないかというのが多いんですけれど、「自分らも頑張るから行政も頑張ってほしい」という芦屋市民の市民度の高さを私は感じました。「先があるな」と、逆に私が力づけられたような感じです。

そのようにポイントを押さえたテーマになっていますので、いまさら私がそれに付け加えて何か言うというのは、ちょっと口幅ったい気がしますが、今日はちゃんと総括的にしゃべれということなので、お耳汚しになるかもしれませんが、お話しさせていただきたいと思います。

最初にお話ししたのは10月でしたね。もう半年にもなるので、何を聞いたかたぶんお忘れかと思いますが、なぜ計画をつくるのかということをお話しさせていただいたと思います。これからの福祉は行政任せではなく、むしろ市民の参加を含めてやっていかないと広がりや深みが出てこないと申し上げました。いちばんのポイントは、一人ひとりの暮らしのネットワークをつくっていこうということです。行政、専門サービスにつながることは、今まで行政が中心にやってきました。でもそれだけでは効果が十分に出てこなくなってきているし、むしろ住民、NPO、ボランティアが横につながることで一人ひとりの暮らしのネットワークをつくろうというのが地域福祉の究極の目標です。それを長期スパンで、地域福祉計画は5年ですが、一年一年走り回るのではなく、もう少し遠くを見ながら、今何をしているのかを振り返りながら着実に前進させていこうというのが地域福祉計画であると申し上げました。

福祉課題を解決していくときには、まず、それぞれ個人が大事です。そして個人が解決できないときに家族の支援があります。どちらかというと、今までの福祉のあり方は、家族の支援が無理な場合に行政にやってもらうとか、専門家にお願いするとか、個人単位でしか見ていなかったんじゃないか。むしろ、横につながらないとなかなか解決は無理です。人々のつながり、住民としてのつながり、市民としてのつながりがあるところに、行政的な支援とか、組織的な情報提供とかが乗ると生きてくる。難しく言うと、ソーシャル・キャピタルです。人間関係がまちづくりの資本であるということです。昔は、「福祉は人なり」と言って、人づくりが福祉であり、これが福祉の施策や取り組みを考えていく要諦であると言っていました。ちょっと言い方を変えているだけなんです。

もう少し分かりやすくするために、身近な例として、自分の経験に引き寄せてお話しします。実は、皆さんが最後の会議をしているときに、本当は私もその会議に出る予定だったんですが、いろいろありまして、タイに行かなければならないことになったんです。タイの北部にある、カンペントット村というチェンマイの南にある県です。もちろんバンコクには、障がいのある人たちのための訓練施設や高齢者のための老人ホームがありますが、ここは貧しい村で、福祉の制度というのほとんどない。せいぜい生活費をちょっと支給してくれるくらいなんです。そこにたまたま大学の教え子が海外青年協力隊で行って、山岳地帯の民族の生活支援をしていました。何もない寒村で農業もちゃんとできない。せいぜいタロイモ、それも、生えているのを採ってきて食料にする程度です。産業らしいものが全然ない。でもやはり現金収入がないと、子どもたちを学校に行かせられないし、いざというときに困ってしまいます。そこで、それぞれ村の伝統芸能である衣装や自分たちで竹細工の楽器をつくったり、昔からの祝い事の踊りをしたりするなど考えました。楽器ができればコンサートをして現金収入になるかもしれません。いろいろ考えた挙句、民族衣装の刺繍や織物を日本人向けの商品に工夫して、日本人観光客のいるバンコクに出すと売れないかということになりました。残念ながら、向こうの民族衣装は原色に近くて日本人には、けばけばしいです。それをもう少し色を落として、淡い感じにしてペンケースやティッシュ入れ、キーホルダーを作ったら買ってくれるのではないか。今までは、商品化することなど考えたことはなく、村の伝統としてつくっているだけだった。しかし、売るためにやろうと思ったら、組織的にやらなければなりません。そこで、織る機械を買えないから、県で借りてきて、プレハブみたいな作業所をつくって、10人くらい女性が集まり、流れ作業をして商品をつくっています。そういうところを訪ねてきました。

一方で、バンコクでは、10階建ての団地が1万棟くらいあります。しかし、ほとんど誰も住んでいないのです。建設資金は日本のODAから出ています。どこかの建築会社は儲かったかもしれませんが、なんという無駄なことでしょう。壊すのにもお金がいるから、雨ざらしのままで、どんどん住めなくなっていきます。非常に矛盾を感じました。
何を申したいのかと言いますと、お金というのは、人と人のつながりや、そのお金を上手に使えるような市民・住民の組織があってこそ生きてくるんだということです。もし、ODAのお金がおりたときに、ちゃんと市民・住民参加でまちづくりをやっていたら、たぶん団地に人が住んでいたでしょう。そこまでしないで、日本政府はただタイの政府にお金を渡して、建設会社につくらせていたのでしょう。そう考えて振り返ってみると、私たちの暮らしているまちでも、本当にちゃんと住民の声や思いを含めて、施策が進められているのか見ていかないといけません。そのための仕掛けがいる。それが地域福祉計画なんだということを申し上げたいと思います。
では、レジュメにいきます。(1)はじめには飛ばします。

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